第3章 地下機構 ⑨
地下空間が軋む。
石片が落ちる。
赤い灯りが暴走する。
レオは制御盤へ張り付いていた。
古い石板。
刻印。
意味不明な古代文字。
「クソ……!」
汗が落ちる。
「止め方どこだ……!」
その背後。
主は鎖を叩き切っていた。
子供達が怯えている。
「立て」
低い声。
子供達は震えたまま動けない。
主が顔をしかめる。
「泣くな」
子供、 泣く。
ログが走りながら叫ぶ。
「アンタそれで泣き止む訳ねぇだろ!!」
「うるせぇ」
白衣が奥へ下がる。
ログが追う。
地下空間がまた揺れる。
レオが石板を睨む。
「違う……!」
「これは停止じゃない!」
主が子供を庇いながら振り返る。
「役人」
レオが叫ぶ。
「封印維持機構だ!!」
空気が止まる。
ログだけが理解してない顔をした。
「……何語だ?」
地下全体が、ゆっくり軋み始めた。
石壁が震える。
赤い灯りが暴走する。
レオの顔から血の気が引く。
「……あ」
ログが察する。
「お前やったな?」
「違っ――」
ゴゴゴゴ……
天井から石片が落ちる。
地下空間全体が揺れた。
レオが半泣きになる。
「ちょっと触っただけだ!!」
「壊したじゃねぇか!!」
「止めろって言ったのお前らだろ!!」
主が煙草を咥えたまま、 低く吐き捨てる。
「喧嘩してる場合か馬鹿共」
その直後。
地下奥で、 重い音が響いた。
ゴゥ……
鉄扉。
更に奥の区画が、 ゆっくり開き始める。
白衣の顔色が初めて変わった。
「……何故開く」
レオが叫ぶ。
「知らないのかよ!!」
ログが白衣を指差す。
「コイツも知らねぇぞ!!」
「最悪だ!!」
地下空間がまた揺れる。
赤い灯りが明滅する。
そして。
地下奥から、 低い呼吸音が響いた。
ズゥ……
ズゥ……
鉄仮面達が、 一斉に動きを止める。
白衣ですら、 奥を見ていた。
主の顔が険しくなる。
「……若造」
「何だ」
「今すぐ役人連れて逃げろ」
ログが顔をしかめる。
「は?」
主は奥を見たまま続ける。
「これは地下街の案件じゃねぇ」
地下空間の空気が変わる。
冷たい。
圧力みたいな何か。
レオが石板を見ながら震えた声を出す。
「封印区画……開放……?」
白衣が初めて、 明確に後退した。
「あり得ない」
ログだけが理解してない顔をする。
「つまり?」
次の瞬間。
地下奥で、 巨大な赤い目が開いた。
地下空間が揺れる。
赤い灯りが暴走する。
白衣はログに胸倉を掴まれたまま、 制御石板へ引き摺られていた。
「早くしろ!!」
「離してください」
「嫌だ」
即答だった。
白衣の顔が少し引き攣る。
人生であまり居なかった相手だった。
レオは石板の隣へ膝を付く。
刻印。
古代文字。
意味は読めない。
だが白衣の手元だけは見える。
白衣は冷静だった。
細い指で、 石板の一部へ触れる。
赤い灯りが少し弱まる。
地下の揺れも僅かに止まる。
レオが息を呑む。
「そこか……!」
白衣が次の刻印へ手を伸ばす。
だが。
レオの顔色が変わった。
「待て」
白衣の指が止まる。
レオは石板を見る。
理解は出来ない。
でも。
今の流れで、 そこへ触るのはおかしい。
「……違う」
白衣が初めてレオを見る。
レオは低く言った。
「今、崩落止まりかけた」
「なのに何でそっち触る」
短い沈黙。
白衣が静かに答える。
「観察力は優秀ですね」
レオが青ざめる。
「下働き!!」
ログが即座に反応する。
「おう」
ドゴォン!!
白衣、 後頭部を殴られて石板へ突っ伏した。
主が煙を吹き出す。
「躊躇ねぇな若造」
ログは真顔だった。
「何か怪しかった」
レオが頭を抱える。
「空気で殴るな!!」




