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ログ外伝  作者: T.M
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閑話 《鴉樽》防衛線

閑話 《鴉樽》防衛線


ログとレオが飛び出して行った後、《鴉樽》は妙に静かだった。


酒場の灯りは半分落とされている。


入口封鎖。


裏通路見張り。


水路側確認。


常連達は、 騒がず勝手に動いていた。


慣れていた。


地下街だからだ。


ミナは酒場奥で、 逃げ込んで来た子供へ薄いスープを渡している。


子供はまだ震えていた。


主は上段通路から、 酒場全体を見下ろしていた。


煙草。


長い外套。


いつもの姿。


だが、 空気だけが違う。


古株の一人が低く言う。


「若造、行かせて良かったのか」


主は煙を吐く。


「止まる奴か」


「止まらねぇな」


酒場で少し笑いが漏れる。


だが短い。


別の常連が武器を机へ置きながら言う。


「見習いは」


「若造を付けた」


主の即答。


「信用してねぇのか」


「半分」


地下街らしい返答だった。


常連達もそれ以上聞かない。


代わりに、 別の男がぼそりと言う。


「じゃあ半分は?」


主は少し黙る。


煙草の火だけが揺れる。


やがて低く言った。


「ガキ探してる目してた」


静かな沈黙。


《鴉樽》の空気が少しだけ柔らかくなる。


ミナが小さく呟く。


「ログと同じ」


主が嫌そうな顔をした。


「一緒にすんな」


酒場で笑いが漏れる。


その時だった。


裏通路側から、 短い合図。


見張りの音。


全員の顔が変わる。


常連の一人が低く言う。


「……来るぞ」


主は煙草を灰皿へ押し付けた。


小さく、 ジリ、と音がする。


そして静かに立ち上がる。


「《鴉樽》閉める」


地下街の主の声だった。


酒場の空気が、 一瞬で戦う側へ変わった。

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