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閑話 鴉樽の由来
ログは看板を見上げた。
《鴉樽》
地下街で一番有名な酒場だ。
でも。
ずっと気になっていた。
ログは主を見る。
「そういやさ」
「あ?」
「何で鴉樽なんだ?」
主は煙草を咥え直した。
「今更か」
「今更だ」
主は少し考えた。
そして答える。
「カラスみてぇな連中が集まるからだろ」
ログは周囲を見る。
酔っ払い。
チンピラ。
情報屋。
喧嘩屋。
確かに碌でもない。
「じゃあ樽は?」
「酒場だからだ」
ログは数秒黙った。
「雑じゃね?」
「名前なんてそんなもんだ」
その時。
近くで飲んでいた常連が笑った。
「違うぞ若造」
「あ?」
「昔は《黒鴉亭》だった」
ログが目を丸くする。
「そっちの方が格好良いじゃねぇか」
常連は酒を飲む。
「看板作った奴が字を書き間違えた」
「は?」
「亭と樽」
ログは主を見る。
主は無言だった。
常連は続ける。
「作り直す金が無かった」
「嘘だろ」
「嘘だ」
主が即答した。




