第7章 ㉗
今度こそ。
本命だった。
ログ達は馬を止めたまま闇を見る。
橋の向こう。
揺れる灯り。
一つ。
二つ。
三つ。
さらに増える。
荷車の灯りではない。
人が持つ灯りだった。
レオが目を細める。
「多いな」
「ああ」
古参も頷く。
少なくとも五人。
いや。
もっといる。
灯りが重なって見えないだけだ。
「どうする」
レオが聞く。
古参は答えなかった。
考える。
相手の人数。
こちらの人数。
場所。
橋。
逃げ道。
全部。
だが。
ログは考えていなかった。
「行くぞ」
馬から降りる。
古参が額を押さえた。
「待て」
「何だ」
「何で毎回そうなんだ」
「今見つけたからだ」
意味が分からない。
古参は本気でそう思った。
レオだけが頷いている。
「確かにな」
「お前まで」
古参は諦めた。
今さらだった。
「囲まれるなよ」
「分かってる」
ログが橋へ向かう。
全員が続いた。
石橋は古かった。
欄干も低い。
足音が響く。
向こうの灯りも止まった。
気付かれたらしい。
静寂。
川の流れる音だけが聞こえる。
やがて。
向こう側から声がした。
「誰だ」
男だった。
ログが答える。
「通りすがり」
「嘘をつけ」
「そうか」
ログは納得した。
古参が頭を抱えた。
「交渉しろ」
「苦手だ」
「知ってる」
橋を渡り切る。
灯りの正体が見えた。
男達だった。
六人。
全員が荷物を背負っている。
木箱。
袋。
束ねられた書類。
そして。
その後ろ。
荷車が一台。
隠すように止められていた。
レオが小さく息を吐く。
「あったな」
古参も見た。
荷車の荷台。
布が掛けられている。
だが。
紙束の端が見えていた。
男達の顔が険しくなる。
「追って来たのか」
「そうみたいだな」
ログが答えた。
男達が顔を見合わせる。
その反応だけで十分だった。
無関係な人間ではない。
古参が前へ出る。
「役所だ」
身分証を見せる。
「荷物を確認する」
男達は動かない。
「断る」
「断れない」
「断る」
空気が張る。
レオが周囲を見る。
逃げ道を探している。
男達も同じだった。
戦うか。
逃げるか。
決めかねている。
その時だった。
荷車の後ろ。
暗闇の中から。
もう一人が現れた。
誰も気付いていなかった。
黒い外套。
深く被った帽子。
顔が見えない。
だが。
そいつが現れた瞬間。
男達の態度が変わった。
「旦那」
一人が呟く。
古参の目が細くなる。
レオも気付いた。
中心だ。
こいつがいる。
黒い外套の男はゆっくりとログ達を見た。
そして。
低い声で言った。
「思ったより早かったな」
ログが笑う。
「そうか?」
「そうだ」
男は答えた。
落ち着いていた。
逃げる様子もない。
むしろ。
待っていたようだった。
古参が一歩前へ出る。
「名前は」
男は答えない。
代わりに。
視線をログへ向けた。
「お前か」
ログが眉を寄せる。
「何だ」
男は少しだけ笑った。
「スヴェトグラスを知っているのは」
橋の上から風が吹く。
誰も動かない。
男の声だけが夜に響く。
「お前だったか」
その瞬間。
古参とレオの表情が変わった。
だが。
ログだけは笑っていた。
「やっと当たりだな」




