↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/157

第7章 ⑭ 

古参はまだ怪訝な顔をしていた。


「スヴェトグラス」


確かめるようにもう一度言う。


何も起きない。


ログは少し笑った。


「もういい」


「何がいいんだ」


「こっちの話だ」


古参は納得していない顔をしていた。


レオが机を指で叩く。


「元上司の記録見られるか」


古参の表情が戻る。


「ああ」


「ただし正式に閲覧を申請すれば記録が残る」


ログが眉を寄せた。


「誰が見たかも?」


「残る」


「面倒だな」


「役所だからな」


古参は立ち上がった。


「俺が見てくる」


レオも立つ。


「俺も行く」


「駄目だ」


「何でだ」


「お前はもう部外者だ」


ログが横から言う。


「俺も部外者だぞ」


「お前は最初からだ」


「じゃあ俺はいいのか」


「駄目に決まってるだろ」


ログは舌打ちした。


古参は扉へ向かう。


「ここにいろ」


「どれくらいだ」


「古い記録だ、少しかかる」


扉を開ける前に。


古参は二人を見る。


「余計なことするなよ」


ログが椅子へ座り直す。


「しねぇよ」


レオも座る。


古参はしばらく二人を見ていた。


「……不安だ」


扉が閉まった。


部屋に二人だけになる。


しばらく誰も喋らない。


ログが煙草を取り出した。


レオが見る。


「禁煙だ」


「まだ吸ってねぇ」


「しまえ」


ログは煙草を指で弄ぶ。


「役所って面倒だな」


「昔から言ってるだろ」


「お前よく働いてたな」


「仕事だからな」


「俺には無理だ」


「知ってる」


ログは不満そうに煙草をしまった。


少しして廊下から足音が聞こえた。


速い。


扉が開く。


古参だった。


顔が変わっている。


レオが立ち上がった。


「どうした」


古参は部屋へ入り。


すぐに扉を閉め鍵を掛けた。


「ない」


「何が」


「記録だ」


ログも立ち上がる。


「元上司のか」


「それだけじゃない」


古参は机へ戻った。


「二人ともだ」


レオの顔が険しくなる。


「消えた男も?」


「ああ」


「十五年前の人事記録そのものは残っている」


「他の職員のものも、異動も退職も残っている」


古参は二人を見る。


「だがあの二人の分だけない」


ログが眉を寄せた。


「最初から無かったんじゃねぇのか」


「違う」


古参は即答した。


「俺は見たことがある」


「いつだ」


「数年前だ。その時には確かにあった」


レオが机へ手をつく。


「誰が持ち出した」


「分からん」


「調べられないのか」


「調べることはできる」


古参は答える。


「だが、今すぐ聞き回れば、こっちが探していると教えるようなものだ」


ログが古参を見る。


「もう遅いんじゃねぇか」


古参の眉が動いた。


「何がだ」


「俺達」


ログは扉を指す。


「さっき受付で名前を出したぞ」


部屋が静かになる。


レオも扉を見る。


受付。


元上司の名前を出した時。


止まった手。


消えた男の名前を出した時。


静かになった周囲。


古参が低く言う。


「……そうだったな」


「誰かが聞いてたなら」


ログが続ける。


「もう伝わってる」


「記録がいつ消えたかは分からない」


古参が言う。


「数年前から今日までのどこかだ」


「ああ」


ログは頷いた。


「でも」


「俺達が探してることは今日伝わったかもしれねぇ」


レオが腕を組む。


「なら向こうが動く」


古参が二人を見る。


「そう決まったわけじゃない」


「動かなきゃ」


ログが笑う。


「それはそれでいい」


「何?」


「動いたら」


ログは扉を見る。


「見つけやすくなる」


古参は呆れたように息を吐いた。


「お前昔からそうなのか」


レオが答える。


「昔はもっと酷かった」


「お前が言うな」


ログが睨む。


レオは無視した。


「記録を抜いた奴が本体とは限らない」


「ああ」


ログも頷く。


「頼まれただけかもしれねぇ」


「だが」


レオが続ける。


「誰かには繋がる」


古参は黙って考える。


やがて。


「記録庫へ出入りできる人間は絞れる」


ログが見る。


「何人だ」


「すぐには分からん。調べておく」


「ただし」


古参は二人を見る。


「お前らは動くな」


ログとレオが黙った。


古参の眉が寄る。


「何だ、その顔は」


「別に」


「何もしねぇよ」


「信用できん」


ログは立ち上がる。


「じゃあ帰る」


「待て」


「何だよ」


「本当に何もしないんだろうな」


ログは扉を開ける。


「ここではな」


古参が額を押さえた。


「やっぱり信用できん」


レオも立ち上がる。


「何か分かったら知らせろ」


「ああ」


「お前も」


古参はレオを指す。


「若造を止めろ」


レオはログを見る。


「無理だ」


「諦めるな」


ログが廊下へ出る。


「聞こえてるぞ」


古参は大きく息を吐いた。


二人が役所を出る。


その頃。


地下街。


鴉樽の前。


見慣れない男達が立っていた。


一人が扉を見る。


「ここか」


もう一人が頷く。


「ああ」


「女は中にいる」


扉へ。


手が伸びた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。