第7章 ⑫
奥から男が出てきた。
年嵩の役人だった。
レオが顔を上げる。
男もレオを見る。
「……久しぶりだな」
「ああ」
十五年。
それだけの年月が経っている。
男の髪には白いものが混じっていた。
役職も上がっているらしい。
服も昔とは違う。
ログは男を見る。
「……」
首を傾げる。
どこかで見た、そんな気がする。
男もログを見た。
「何だ」
「いや」
ログはもう一度見る。
「どっかで見たことあるな」
男の眉が寄る。
「お前もな」
二人で見る。
「……」
「……」
レオが横から聞く。
「知り合いか」
「知らねぇ」
「知らん」
同時だった。
レオは黙った。
男はログを見る。
顔。
服。
受付に置かれた呼び鈴。
そして。
ログの態度。
「あ」
男が声を出した。
「何だ」
「お前」
男が指を差す。
「昔ここで暴れた若造か」
ログの眉が寄った。
「暴れてねぇ」
「暴れた」
「揉めただけだ」
「机を蹴った」
レオがログを見る。
「暴れてるじゃねぇか」
「向こうが面倒なこと言うからだ」
男は呆れた顔をする。
「十九だと言い張っていたな」
ログの顔が険しくなる。
「十九だったんだよ」
「十六か十七だと思った」
「だから十九だ!」
男は少し考えた。
「あれから十五年か」
ログを見る。
「さすがに大人になったな」
「当たり前だ」
「昔なら」
男は受付を見る。
「今頃あの鈴を投げていた」
ログも呼び鈴を見る。
「便利だから投げねぇよ」
レオが額を押さえた。
男は小さく笑った。
「少しは変わったらしい」
ログは不満そうに煙草を取り出す。
男がすぐ言う。
「ここは禁煙だ」
ログの手が止まった。
「面倒だな」
「昔からだ」
ログは煙草を戻した。
男はレオを見る。
「それで」
笑みが消える。
「十五年前の人間を二人も掘り返して」
「何があった」
レオも表情を変えた。
「元上司を探している」
男は答えない。
「俺の妹が見つかった」
男の目が動いた。
「……生きていたのか」
「ああ」
レオは続ける。
「本人から聞いた。十五年前あいつに呼び出された」
男の顔から完全に表情が消えた。
「兄が呼んでいると言われて役所へ来た」
「そこで元上司に会ってその後の記憶はない」
男は黙っている。
「次に目を覚ました時には地下にいた」
周囲にいた役人達が僅かに動いた。
古参はそれを見て
「中で話す」
短く言った。
レオが見る。
「ここでは駄目か」
「ああ」
男は奥の扉を開ける。
「二人とも来い」
ログが歩き出す。
その横でレオが小さく言った。
「若造」
「何だ」
「暴れたんだな」
「昔の話だ」
「机を蹴った」
「十九だった」
「関係ない」
ログは不機嫌そうに奥へ入った。
古参が後ろから呟く。
「変わってないな」
「聞こえてるぞ」
扉が閉まった。




