第7章 ⑨
女は静かに話し続けた。
「気が付くと。」
「知らない部屋でした。」
「私以外にも。」
「子供がいました。」
「みんな。」
「泣いていました。」
店の中は静かだった。
「しばらくすると。」
「大人が来ました。」
「何人かの名前を呼んで。」
「その子達だけ。」
「連れて行きました。」
女は俯く。
「泣いて。」
「嫌がって。」
「それでも。」
「連れて行かれました。」
レオは拳を握る。
女は続けた。
「私達は。」
「そのままでした。」
「何日いたのか。」
「分かりません。」
「ご飯だけ。」
「運ばれてきました。」
少しだけ息を吸う。
「ある日。」
「急に。」
「部屋が揺れました。」
ログの目が細くなる。
「音がして。」
「光って。」
「気を失いました。」
誰も口を挟まない。
「目が覚めると。」
「洞窟の近くでした。」
「知らない山。」
「知らない景色。」
「子供達も。」
「一緒でした。」
「大人は。」
「誰もいませんでした。」
主が静かに聞く。
「そこから。」
女は頷く。
「村の人が。」
「助けてくれました。」
「みんな。」
「優しい人でした。」
少しだけ笑う。
「本当の家族みたいに。」
「そこで暮らして。」
「少しずつ。」
「思い出したんです。」
「お兄ちゃんのこと。」
「王都のこと。」
「家のこと。」
レオは黙って聞いていた。
「だから。」
「帰ろうと思いました。」
「お兄ちゃんが。」
「まだ探してくれている気がして。」
レオは何も言えなかった。
女は続ける。
「帰る途中。」
「子供達に会いました。」
「逃げて来たって。」
「泣いていて。」
「放っておけませんでした。」
主が短く聞く。
「それで。」
「一緒に。」
「王都へ向かいました。」
「でも。」
「途中で。」
「はぐれてしまって。」
女は申し訳なさそうに俯く。
「探していたら。」
少しだけ困ったように笑う。
「落ちました。」
店の中が静かになる。
主がログを見る。
「昔は。」
「お前も。」
「よく落ちたがな。」
ログの手が止まる。
「……。」
レオが小さく笑った。
「『空気だ。』」
「とか言ってたな。」
ログは煙草を咥え直す。
「忘れろ。」
主は鼻で笑った。
「無理だ。」
張り詰めていた空気が。
少しだけ。
和らいだ。




