第7章 ⑧
診察は終わった。
医者は最後の子供の額へ手を当てる。
「熱はない。」
「少し疲れているだけだ。」
主は空になった器を見る。
「食ったか。」
子供達は頷く。
空の器を大事そうに抱えていた。
主はヴィクを見る。
「部屋。」
「連れて行け。」
ヴィクは頷いた。
「うん。」
「でも。」
「狭いよ?」
主は短く答えた。
「今日は。」
「一緒の方がいい。」
ヴィクは笑う。
「分かった。」
年上の子が小さな子の手を握る。
ヴィクも笑顔で手を振った。
「行こう。」
子供達はまだ少し緊張していた。
それでも。
ヴィクの後を付いて歩き始める。
ミナも立ち上がった。
「私も行く。」
「寝るまで一緒にいるよ。」
女も立ち上がる。
「私も……。」
主は首を振った。
「子供が先だ。」
「安心して寝かせろ。」
女は少し迷う。
それでも頷いた。
「……はい。」
子供達と一緒に奥へ消えていく。
店の中は静かになった。
その時。
扉が開く。
ログだった。
「戻った。」
主が聞く。
「どうだ。」
ログは煙草を咥える。
火を点けた。
一口吸う。
「付けられてはいない。」
煙を吐く。
「今のところ。」
「大丈夫だろう。」
主は一度だけ頷く。
「ああ。」
しばらくして。
足音が聞こえた。
女が戻って来る。
「眠りました。」
ミナはそのまま子供達の側に残っているらしい。
レオは椅子を引いた。
主も腰を下ろす。
ログは煙草を灰皿へ置く。
四人だけになった。
主が静かに言う。
「話せ。」
女はゆっくり息を吸った。
「十五年前。」
「私を攫った人達は。」
レオを見る。
震える声だった。
「研究所の人じゃありませんでした。」
レオの眉が動く。
女は続けた。
「研究所へ。」
「連れて行っただけです。」
店の中が静かになる。
女は拳を握った。
そして。
ゆっくり口を開く。
「私を攫ったのは。」
「レオお兄ちゃん。」
「あなたの。」
「元上司でした。」




