第7章 ⑦
扉が開いた。
「ただいま。」
ヴィクの声が響く。
店の中には。
主。
ログ。
医者。
いつもの常連達。
全員がいた。
子供達は足を止める。
主を見る。
顔が怖い。
小さな子が年上の子の服をぎゅっと掴んだ。
主は全員を一度だけ見た。
「……。」
「医者。」
「診ろ。」
「分かった。」
医者はすぐ立ち上がる。
「こっちだ。」
「順番。」
その横で。
レオはログを見る。
ログもレオを見た。
一瞬だけ。
目が合う。
「行ってくる。」
ログが短く言う。
レオは頷いた。
「ああ。」
それだけだった。
ログは煙草を灰皿へ押し付ける。
そのまま店を出た。
地下水路へ向かう。
誰か。
後を付けて来ていないか。
他に落ちた者はいないか。
見落としはないか。
自分の目で確かめるためだった。
医者は子供達を椅子へ座らせる。
「熱は。」
「怪我は。」
「擦り傷だけか。」
一人ずつ診ていく。
「冷えてるな。」
「毛布。」
常連が慌てて毛布を持ってくる。
その横で。
別の常連が女へ近付いた。
「お、お嬢さん。」
「寒くないか?」
「茶でも――」
ゴン。
主の拳が頭へ落ちた。
「邪魔だ。」
「子供が先。」
「……はい。」
もう一人が口を開く。
「何か食べ――」
医者が睨んだ。
「診察中。」
「外。」
「……はい。」
ぞろぞろ。
常連達は店の外へ追い出された。
外からぶつぶつ声が聞こえる。
「親切にしようとしただけなのによ。」
「何で追い出されるんだ。」
ミナは苦笑した。
「学ばないねぇ。」
それから。
ぽつりと呟く。
「ここにも。」
「女はいるんだけどねぇ。」
主が答える。
「家族だ。」
医者も頷く。
「今さらだ。」
外からも声が飛ぶ。
「ミナは家族!」
「妹みたいなもんだ!」
「そうそう!」
ミナは肩を落とした。
「女扱いされてないじゃん。」
ヴィクは首を傾げる。
「?」
何の話か分からなかった。
主はヴィクを見る。
大きな手を伸ばす。
ぽん。
頭を一度だけ撫でた。
「よくやった。」
ヴィクは嬉しそうに笑う。
「うん!」
その笑顔を見て。
子供達も。
少しだけ。
肩の力を抜いた。
怖い顔の人達だった。
でも。
少なくとも。
悪い人ではなさそうだった。




