第7章 ⑥
女はまだ少し濡れていた。
子供達も震えている。
ここに長くいる場所ではない。
ヴィクは子供達を見る。
「ここ。」
「寒い。」
小さな子がくしゃみをした。
「鴉樽。」
「暖かいよ。」
その言葉で。
年上の子が身構えた。
「鴉樽……?」
子供達が顔を見合わせる。
聞いたことはある。
でも。
良い噂ではなかった。
女も少しだけ表情を曇らせる。
「地下街の酒場……。」
「危ない場所って。」
ヴィクは首を傾げた。
「危なくないよ?」
「主もいるし。」
「ご飯もある。」
「子供もいる。」
「安心。」
女はレオを見る。
本当に。
信じていいのか。
レオは迷わなかった。
「俺も行く。」
「まずは安全を確保する。」
「話はその後だ。」
女は小さく頷く。
「……うん。」
年上の子も周りを見回した。
行く場所はない。
子供達を守らなければならない。
静かに頷いた。
ミナはレオを見る。
「私は先に戻る。」
「主へ話を通してくる。」
レオは頷く。
「ああ。」
「頼む。」
ミナはヴィクの頭を軽く叩いた。
「ちゃんと連れて来るんだよ。」
「うん。」
ヴィクは元気よく頷く。
ミナは地下街を駆けて行った。
その背中を見送る。
レオは妹を見る。
聞きたいことは山ほどある。
どうして生きていたのか。
どこで暮らしていたのか。
なぜ今ここにいるのか。
全部。
聞きたい。
でも。
今じゃない。
今は。
守る方が先だった。
ヴィクは子供達へ笑い掛ける。
「大丈夫。」
「僕について来て。」
子供達はまだ不安そうだった。
それでも。
レオとヴィクを見て。
ゆっくり歩き出した。
ヴィクが先頭。
子供達。
女。
最後尾をレオが歩く。
周囲へ目を配る。
地下街は。
何が起きるか分からない。
だから。
話は。
安全な場所へ着いてからだった。




