第7章 ⑤
女は咳き込む。
ヴィクが手を貸す。
「大丈夫?」
女は頷く。
まだ少し苦しそうだった。
ミナも近付く。
「怪我は?」
女は首を振る。
「多分……大丈夫。」
レオは黙って見ていた。
どこか。
引っ掛かる。
そんな顔だった。
女もレオを見た。
じっと。
見つめる。
「……。」
震える声。
「お兄ちゃん?」
レオは眉を寄せた。
「……誰だ。」
女は涙をこぼす。
「人違いならごめんなさい」
「レオお兄ちゃん?」
レオは動かない。
あり得ない。
十五年前。
あの日から。
ずっと探していた。
でも。
目の前の女は。
大人だった。
子供の妹とは結び付かない。
レオは近付く。
女も動かない。
そして。
スカートへ手を伸ばした。
ゴン。
ミナの拳が後頭部へ落ちる。
「何してんの!!」
レオは頭を押さえた。
「確認だ。」
「だからってスカート捲るな!!」
「傷がある。」
女は涙を拭く。
「うん。」
自分で裾を少し上げた。
左足。
膝の下。
細く残る傷。
レオは息を止めた。
幼い頃。
自分が負わせてしまった傷。
泣きながら謝った。
忘れるはずがない。
「……。」
女は小さく笑う。
「覚えてる?」
レオはゆっくり頷く。
「……生きていたのか。」
女は泣いた。
ずっと。
探していた。
兄が。
目の前にいた。
少しだけ。
落ち着いてから。
ヴィクが聞く。
「この子達。」
「知ってるの?」
女は頷く。
「うん。」
「一緒に来た。」
子供達も頷いた。
「お姉ちゃん。」
「一緒だった。」
女は話す。
「途中で。」
「はぐれちゃって。」
「探していたら。」
少しだけ上を見る。
苦笑した。
「落ちた。」
ヴィクは頷く。
「そうなんだ。」
ミナは吹き出す。
「地下街へようこそ。」




