第7章 ④
ヴィクはパンを抱えた。
地下水路を歩く。
いつもの場所。
子供達が待っていた。
「持ってきた。」
子供達が嬉しそうに集まる。
パンを配る。
スープも渡す。
小さな子が笑った。
その時。
ガコン。
ヴィクが顔を上げる。
「?」
子供達も天井を見る。
次の瞬間。
「きゃあああっ!」
ドボーン!!
大きな水しぶき。
子供達が一斉に後ろへ下がる。
小さな子は慌てて年上の子の後ろへ隠れた。
ヴィクも思わず身構える。
「誰!?」
水路の中。
女が咳き込んでいた。
げほっ。
げほっ。
びしょ濡れのまま、水へ手をつく。
何が起きたのか分かっていない顔だった。
その時。
後ろから声がした。
「大丈夫か。」
ヴィクが勢いよく振り返る。
「!!」
ミナ。
レオ。
二人が立っていた。
「えっ!?」
ヴィクは目を丸くする。
「何で二人がここに!?」
子供達も警戒する。
知らない大人。
二人。
年上の子が小さな子達を庇うように前へ出た。
ミナは苦笑した。
「安心して。」
「護衛だから。」
「護衛?」
ヴィクは首を傾げる。
「いつから?」
「最初から。」
レオが短く答えた。
ヴィクは固まる。
「全然気付かなかった……。」
「だから護衛。」
ミナは肩をすくめた。
それから。
水路を見た。
女はまだ咳き込んでいる。
ミナが少し笑う。
「懐かしいね。」
レオも水路を見る。
「ああ。」
「昔。」
「若造がよく落ちてきた。」
ヴィクが首を傾げる。
「若造?」
「ログ。」
ミナは吹き出す。
「『空気だ!』って言いながら歩いて。」
「そのまま落ちるの。」
レオは小さく頷いた。
「何度も。」
「運が良かっただけだ。」
ミナは笑いながら水路を見下ろえる。
「久しぶりに見たなぁ。」
「人が落ちてくるの。」
ヴィクは女を見る。
天井を見る。
もう一度。
女を見る。
「……。」
少しだけ考えた。
それから。
「人って。」
「上から落ちてくるんだ。」
ミナは吹き出した。
「たまにね。」
レオも頷く。
「ああ。」
ヴィクは納得したように頷く。
「そうなんだ。」
子供達は全然納得していなかった




