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第7章 ① 

誘拐騒ぎから数年後


朝。


地下街。


「待てー!」


少年達が走る。


先頭はヴィクだった。


「捕まえてみろ!」


後ろから五人。


全力で追い掛ける。


細い路地。


木箱。


樽。


ヴィクは迷わず飛び越えた。


後ろの少年が木箱へぶつかる。


「いてっ!」


「遅い!」


ヴィクは笑った。


角を曲がる。


その瞬間。


大きな影。


どん。


ぶつかった。


「おっと。」


ヴィクが見上げる。


主だった。


「……。」


主は煙草を咥えたまま。


ヴィクを見る。


「逃げてる。」


「見れば分かる。」


「追われてる。」


「それも。」


後ろから少年達が飛び出してきた。


「あ!」


全員止まる。


主を見る。


固まる。


主は煙草の灰を落とした。


「何だ。」


一番年上の少年が前へ出る。


「ヴィクが!」


「俺達のパン取った!」


ヴィクが言う。


「違う。」


「賭けで勝った。」


少年達が黙る。


「……。」


主は全員を見る。


「本当か。」


少年達は顔を見合わせた。


一人が小さく頷く。


「負けた。」


「でも。」


「悔しかった。」


主はヴィクを見る。


「返すか。」


「やだ。」


即答だった。


主は煙草を咥え直す。


「なら。」


「最後まで逃げろ。」


ヴィクの目が光る。


「おう!」


次の瞬間。


また走り出した。


「待てー!」


少年達も追う。


一斉に駆け出す。


砂埃が舞う。


騒がしい。


主はその背中を見送った。


少しして。


ミナが走ってくる。


「ヴィク見なかった!?」


主は煙草の先で路地を指した。


「あっち。」


「ありがと!」


ミナも走る。


「ヴィクー!」


地下街へ声が響く。


主は小さく笑う。


「今日も元気だ。」


その様子を見ていた常連が苦笑した。


「完全にガキ大将ですね。」


「ああ。」


「誰に似たんだか。」


主は何も答えなかった。

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