第6章 ⑯
昼。
表。
ログとレオは町を歩いていた。
市場。
宿屋。
荷車。
どこも変わらない。
いつもの町。
レオは周囲を見回す。
「何を探しているんです。」
「知らん。」
即答だった。
「……。」
レオは何も言わない。
いつものことだ。
ログは歩く。
止まる。
また歩く。
路地へ入る。
古い倉庫の前で足を止めた。
扉を見る。
荷車の跡。
地面に残る靴跡。
「ここ。」
レオは辺りを見回す。
「理由は。」
「気になった。」
レオはため息をつく。
「また勘ですか。」
「外したことは。」
「ありませんね。」
二人は扉を開けた。
静かだった。
誰もいない。
机。
空箱。
縄。
床には燃え残った紙。
食べかけの固いパン。
「遅かった。」
レオが小さく呟く。
ログは部屋を見回す。
壁。
床。
棚。
一つずつ見る。
机の引き出しを開けた。
帳面。
紙束。
地図。
「これ。」
レオが受け取る。
「持ち帰ります。」
「人は。」
「もういません。」
ログは頷いた。
「逃げたな。」
二人は書類だけを抱え。
地下街へ戻った。
鴉樽。
机いっぱいに紙が並ぶ。
レオは帳面を開く。
白衣の男も隣へ座った。
一枚。
また一枚。
黙ったまま目を通す。
ログも紙を一枚取る。
見る。
裏返す。
もう一枚。
「……。」
さらに一枚。
「無理だ。」
紙を机へ戻した。
レオが顔を上げる。
「早いですね。」
「任せた。」
ログは椅子へ深く座る。
煙草へ火を付けた。
白衣の男が少し笑う。
「向いていませんね。」
「知ってる。」
紫煙がゆっくりと天井へ昇る。
レオは苦笑しながら紙をめくった。
「だから私達がいるんです。」
静かな時間が流れる。
紙をめくる音だけが続いた。
やがて。
白衣の男が一枚の紙を机へ置く。
「薬です。」
「移送中に使った記録でしょう。」
レオも別の紙を並べる。
「こちらは地図です。」
「ですが。」
「目的地ではありません。」
「全部。」
「中継地です。」
ログは煙草を灰皿へ押し付けた。
「黒帳と同じか。」
「いいえ。」
レオは首を振る。
「似ています。」
「でも違います。」
「別の組織です。」
部屋が静かになる。
レオは最後の紙を閉じた。
「地下街だけでは追えません。」
白衣の男も頷く。
「次は表です。」
ログは立ち上がる。
「行くか。」
短い一言だった。
レオは書類を束ねる。
「役所。」
「宿屋。」
「商人。」
「街道。」
「全部洗います。」
ログは肩を回した。
「面倒だな。」
レオが笑う。
「今さらですよ。」
ログも少しだけ笑った。
「違いない。」
二人は鴉樽を出る。
向かう先は。
地下街ではない。
表だった。




