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第6章 ⑬
鴉樽。
男が三人。
床へ転がされていた。
縄で縛られている。
主は椅子へ座る。
煙草に火をつけた。
「起こせ。」
白衣が水をかける。
男が目を開けた。
辺りを見回す。
仲間もいる。
全員。
縛られていた。
「……。」
主が煙を吐く。
「聞く。」
男は睨み返した。
「話すことはない。」
主は頷く。
「そうか。」
少しだけ間を置く。
「スヴェトグラス。」
男の目が見開いた。
反射だった。
「スヴェトグラ――」
腕へ。
赤い線が浮かぶ。
護衛が息をのむ。
「まただ!」
主は静かに言う。
「黙れ。」
赤い線が消えた。
男はそのまま崩れ落ちる。
白衣がすぐ脈を診た。
「生きています。」
「気絶しただけです。」
部屋が静かになる。
護衛は男を見る。
また主を見る。
「今のは……。」
主は煙草をくわえ直した。
「これを言うと。」
「大人しくなるらしい。」
護衛は首をかしげる。
「らしい?」
「試してみろ。」
護衛は半信半疑で隣の男を見る。
「……スヴェトグラス。」
男が反射的に口を開く。
「スヴェトグラ――」
赤い線。
「主!」
「黙れ。」
赤い線は消えた。
男も崩れ落ちる。
白衣が苦笑する。
「本当でしたね。」
護衛は呆然としていた。
「何なんだ……これ。」
主は答えなかった。
煙草の煙だけが。
静かに揺れていた。




