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第6章 ⑩
店の扉が勢いよく開いた。
「ワン!」
ママ犬だった。
ミナが顔を上げる。
「帰って来た。」
ママ犬は真っ直ぐミナへ走る。
服の裾をくわえた。
ぐい。
ぐい。
「何。」
「ワン!」
外へ走る。
すぐ振り返る。
「ワン!」
もう一度。
服を引っ張る。
ミナの顔色が変わった。
「……主。」
煙草をくわえたまま主が顔を上げる。
ママ犬を見る。
外を見る。
もう一度犬を見る。
「ああ。」
短く頷いた。
「見つけたか。」
ママ犬は嬉しそうに尻尾を振る。
すぐ外へ走った。
「行くぞ。」
主が立ち上がる。
ミナ。
護衛。
常連二人。
静かに店を出た。
思ったより近くの石造りの小屋だった。
窓はない。
入口は一つ。
外には男が一人。
腕を組み立っていた。
ママ犬が吠える。
「ワン!」
「ワン!」
男が顔をしかめる。
「うるせぇ犬だ。」
その時。
「おーい!」
陽気な声が響いた。
酒瓶を持った常連がふらふら歩いてくる。
「兄ちゃん!」
「一人で何やってんだ!」
男は眉をひそめる。
「帰れ。」
「冷てぇなぁ。」
常連は笑う。
肩へ腕を回そうとする。
「飲もうぜ!」
「離せ!」
「お?」
「喧嘩か?」
「いいぞ!」
男の意識が常連へ向く。
その横を。
主達は音もなく通り過ぎた。
小屋の扉へ近付く。
主は静かに手を掛けた。




