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第6章 ⑧
翌日の昼。
常連が一人、店へ戻って来た。
「おう」
「変な噂だ」
「何だ」
男は周りを見た。
「鴉樽が子供を殺したらしい」
「……は?」
店が静かになる。
「誰が言ってた」
「知らねぇ町の奴ら」
その時扉が勢いよく開く。
「ここか!」
男が怒鳴り込んできた。
「うちの子を返せ!」
誰も知らない顔だった。
腕には包帯。
暑い日なのに。
常連が小さく呟く。
「暑そうだな」
「馬鹿」
押し問答になる。
男は怒鳴る。
「子供を殺したんだろ!」
その時男の口が小さく動く。
「……スヴェトグラス」
近くにいた護衛が目を見開く。
「あ!あの時!」
反射だった。
「黙れ!」
男の言葉が止まる。
体が震えた。
男の目が見開く。
「な……」
そのまま崩れ落ちた。
店中が静まり返る。
「倒れたぞ!」
医者が駆け寄る。
脈を見る。
「生きている」
「気絶だ」
包帯がずれた。
「あれ」
医者が眉をひそめる。
「赤い線が……ない」
護衛が息をのむ。
「やっぱり」
「消えた」
店の空気が固まる。
店の誰も。
何が起きたのか分からなかった。




