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第6章 ⑦
子供は奥へ運ばれた。
白衣が包帯を解く。
腕。
項。
赤い線。
白衣の顔色が変わる。
「私より……深い」
護衛二人も覗き込む。
言葉が出ない。
子供は天井を見ていた。
焦点が合っていない。
やがて唇が小さく動く。
「……スヴェトグラス」
護衛の一人が首を傾げた。
「今、何て言った」
「聞き取れねぇ」
もう一人も首を振る。
その時だった。
主が低く言う。
「黙れ」
部屋が静まり返る。
子供の体が震えた。
赤い線がすうっと消えていく。
「……!」
白衣が目を見開く。
赤い線は完全に消えた。
子供の力が抜ける。
白衣が慌てて支える。
脈と呼吸を見る。
「生きている。気を失っただけだ」
白衣はもう一度腕を見る。
何もない。
赤い線は消えていた。
白衣は主を見る。
何かを聞こうとする。
主は答えない。
「寝かせろ」
それだけだった。
夜の鴉樽。
「おい!聞いてくれ!」
帰って来た護衛が酒を一気に飲み干す。
「どうだった!」
「助かった!」
「それより!子供がよ!」
「何か変な言葉喋ったんだ!」
「何て」
「分からん!」
「スベ……何とか!」
「覚えてねぇ!」
店中が笑う。
「馬鹿」
護衛は頭を掻く。
「でもよ!」
「主が『黙れ』って言ったら」
「赤い線が消えた」
一瞬店が静かになる。
「……」
「意味分からん」
「俺も」
護衛は笑った。
「でも格好良かった!」
誰かが吹き出した。
「結局そこか」
笑いが戻る。




