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16話→共同依頼

 

 レジーナの襲撃に遭ってから数日経つ。


 彼女の犯行をギルドに報告したところ、シルバーからブロンズへのランク降格に一部財産の没収、加えて一定期間の奉仕活動が本人に命じられた。


 しかも奉仕活動期間は『隷属の首輪』というマジックアイテム(魔力を帯びた不思議な道具の総称)の着用を義務付けられている。


 これを付けた人間が予め設定した規則を破った場合、激しい痛みを味わう事になる。

 破り続けると死に至るようだ。


 この首輪を嵌めているおかげか、レジーナは小さな文句を言いつつも奉仕活動に励んでいるらしい。

 冒険者としての実力は純粋に高いのだから、罰を受け終えたら真面目に活動してほしいものだ。


 で、俺達の方はと言うと――


「はあああっ!」

「おおおおお!」


 木剣と木剣がぶつかり合う音が響く。

 ……俺とネーヴェはあの日、対人戦の経験不足を痛感させられた。


 運良く勝ちを拾えたものの、あんなラッキーパンチは二度と訪れない。

 故に最近は模擬戦を繰り返していた。


 場所は宿の裏庭だったり、街の近くの平原だったり……暇さえ見つけては特訓に明け暮れている。

 因みに戦績は俺の全敗だ。ちくしょう。


 とは言え俺と彼女ではスタートラインが違う。

 寧ろ数週間前までニートだった男が、戦闘経験者とある程度戦えるようになるまで成長したのが凄い。


 そんな感じで慌ただしくも充実した毎日を送っていたが――ある日とある冒険者パーティーから声をかけられ、共同で依頼を受ける事になった。


 相手は四人、こちらは二人。

 合計で六人パーティーになるが、モンスター討伐における理想的なメンバー数は六人らしい。


 その分報酬の分け前は減るが、安定性は五人以下とは比べ物にならないとか。

 そういう経緯もあり、俺達は申し出を了承した。



 ◆



「やっほー二人とも、今日はよろしくね!」


 早朝、ギルド前。

 俺とネーヴェは今日共に依頼を受ける冒険者パーティーと顔合わせをしていた。


 まあ、顔だけなら既に知っているけど。


「数日ぶりだな。今日はよろしく頼む」

「もー、アスピダ君はいつも固いよー。ほら、もっと笑った方がモテるって」

「リーダーのお前がもっとしっかりしてくれたら、俺も好きなだけ笑えるんだがな……」


 目前でコントとしか思えないやり取りを繰り広げているのは、先日知り合ったシュテルンとアスピダ。

 今日共に依頼を受けるのは彼女達だ。


 シルバーランクとストーンランク。

 釣り合わないどころの話では無いが、シュテルン本人が直々に話を持ちかけてきた。


 こちらとしては先輩冒険者、それも最前線を走っているようなエリートパーティーの活動を間近で見れるのは百利あって一害無し。


 お言葉に甘えて申し出を受けたというワケだ。


「お、お二人とも、アラトさんとネーヴェさんが困惑していますので、そろそろ……」

「悪いなー、オレ達っていつもこんな感じなんだ」


 シュテルンとアスピダ以外の二人とは、今日初めてまともに顔を合わせて話をする。

 既に自己紹介は済ませていた。


 焦げ茶色の髪を三つ編みに結び、丸メガネを掛けた小柄な少女がマニ。

 小学校で学級委員長とかやってそうだ。


 木製の長い杖を両手で持っている。

 見た目通りに物静かな子で、あまり我の強そうなタイプでは無さそうだ。


 一方で緑髪の爽やかイケメンの名前はヴァン。

 長い槍が武器のようで、今も傍らにある。

 部活に励むスポーツ少年って雰囲気だ。


 ここにシュテルンとアスピダを加えたのが、新進気鋭のシルバーランク冒険者パーティー。

 うーむ、全員俺より歳下なのに凄いなぁ。


 因みにシュテルンは両手で持つような大剣を背負い、アスピダは盾と剣を装備したオーソドックスな戦士スタイルだ。


「アラトさんも才能なら負けてませんよ」

「うお、急にどうした? 嬉しいけど恥ずかしい」


 ネーヴェが突然、ニッコリと微笑みながら言う。

 まさか俺の思考を読んで?

 いやいや、まさかな……


「何が出来るか分からないけど、改めて……今日はよろしく頼む」

「おうよ! 期待してるぜアラト!」


 ヴァンに握手を求めると秒で応じてくれた。


 良い奴オーラが滲み出ている。

 基本冒険者なんてのはチンピラ同然な奴ばかりだが、彼らのようなタイプも居るんだな。


 ――約二時間後。


 俺達は討伐対象モンスターが確認された、森の中にある川の近くまでやって来ていた。


 移動中、何度か依頼と関係無いモンスターと遭遇したが、全てヴァンが瞬殺したので消耗はしていない。

 彼の槍捌きとスピードは尊敬に値する。


「ふと思ったんだが、一体誰がこんな森の中に生息しているモンスターの討伐を依頼したんだ? 今回に限らず、他の依頼にも言えるけど」

「あーそれね、多分街の偉い人達だよ?」


 疑問に答えてくれたのはシュテルンだった。


「街の周辺に人を派遣して、モンスターの有無を定期的に確認しているの。それでモンスターを見つけたら、種類とある程度の居場所を記録してギルドに依頼として仕事を振る。私達冒険者がその依頼を受けてモンスターを倒す……理由としてはこんな感じかな」

「シュテルンさんの説明に付け足すなら、モンスターは積極的に人間を襲う生物ですので、例え街から離れた場所でも人間が集まっている所を嗅ぎつけて襲いに来ます。だからある程度離れた所にも、モンスター討伐の依頼があるワケですね」

「へぇ、色々考えられているんだな」


 マニが自信満々に語る。

 彼女はモンスターに対する知識が豊富なようだ。

 知識、つまり情報も大きな武器の一つ。


 戦う相手について何か知っているか、いないのか、これだけでも戦闘の質が変わる。

 ついでに今日倒すモンスターについて聞いてみた。


「マニ、今探してる『ジョーフロッグ』ってどんなモンスターなんだ? カエルなのは分かるけど」

「は、はいっ!」


 人見知りが激しいのか、俺の方から話しかけると一瞬ビクリと体を震わせたが、得意分野の話題だと気づくと直ぐに調子を取り戻して口を開く。


「えー、ジョーフロッグは見た目だけなら普通のカエルです。ただし大人を余裕で丸呑み出来る巨体と大きな顎、獲物を搦めとる長い舌などを持ちます」

「中々厄介そうな相手だな」

「実際強めのモンスターですから。適性ランクとしてはブロンズ上位〜シルバーくらいでしょうか?」


 マニの言葉を聞き、ピタリと足を止める。


「え? それって俺ら大丈夫なの?」

「んー、平気だと思うよー?」

「そんないい加減な……」


 焦る俺とは対象的に楽観的な様子のシュテルン。

 するとアスピダが会話に割って入ってくる。


「問題無い、俺の見立てだとお前たち二人は強さだけならブロンズ並みだ。それにジョーフロッグなら俺達が何度も倒しているから安心するといい。今日は――いや、これはまだ話す必要は無いか」


 彼は途中で口を閉ざす。


 話を勿体ぶるのが好きなタイプのようだ。

 俺とネーヴェの実力は認められているようだけど、真意がどこにあるかまでは分からない。


「とても気になるけど、後半は聞かなかった事にするよ」

「話が早くて助かる」

「なあなあっ! そんなつまんねー話しする前にもっと話すべき話題があるだろ!?」


 ヴァンが槍をブンブン振り回しながら叫ぶ。

 アスピダがめちゃくちゃ面倒くさそうな顔をするが、いつものことなのか力無く肩を下げる。


「……一応聞いておくが、お前の言う話題とは何だ? ヴァン」

「んなの、アラトとネーヴェちゃんが付き合ってるかどうかに決まってんだろー?」

「ふえっ!?」

「あー! それ私も気になってた! なんかすっごい仲良いよね二人とも!」

「た、確かにアラトさんの事は尊敬していますが、その、そういう関係では……」


 突然会話の槍玉に挙げられ困惑するネーヴェ。


 なんか前にも似たような事があったような……

 デジャヴに頭を抱えながらも、この手の話題に耐性が無い彼女を守るべく俺は会話の中心に混ざった。

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