第七章 第五幕 疑心暗鬼
最初の感染者が出た。
国内のニュースも連日、感染症関連の報道をするようになった。
一番人々を恐怖させたのは、治療法が確立してないことだった。
世界中で死者が急増した。
有名な芸能人の訃報も続いた。
みんな不安だった。
隣の人が感染してないか疑った。
人々は距離を取り、マスクを着用した。
消毒液を携帯し、移動に神経を尖らせた。
ある県では、
県外ナンバーの車を見ただけで、
石を投げつける者が現れるほどだった。
人々は移動や外食を自粛した。
飲食店が次々と閉店していった。
弁当を売るところが続出した。
だれもが懸命に生きた。
「ARK、現状を分析してくれ。」
優作はARKに指示を出した。
モニターの幾何学模様が静かに揺れた。
『優作、人々の動きが止まりました。』
「そうか。」
「ドローンで人々を繋ごう。」
優作は瀬戸に電話を入れた。
「向井さんと話はついているか?」
「はい。」
「いまから、タクシーのように、自宅へドローンを呼べるようにする。」
「食料も薬も、自宅まで届ける。」
「アプリをダウンロード出来るようにしろ。お前が調整するんだ。」
優作は瀬戸にそう告げた。
計画はこうだった。
高速道路を自動運転トラックで結ぶ。
ターミナル中継地点でトラックに荷物を積み替える。
その後、各家庭の近くまでトラックで運ぶ。
最後の五キロ位をドローンで結ぶ計画だった。
タエさんの店に来れなくなったトメさんのために、
弁当を運ぶ実験をしてみた。
成功した。
「ここからまた始めよう。」優作は瀬戸とそう話した。
暁商店街の道には、誰もいなかった。
幕間、
全国の小学校に暁グループから申し出があった。
コンサルティング会社、Satio 開発の学校と児童をつなぐアプリを
無償で配布すると言うことだった。
それは、
子供が学校に行けなくても、
授業を受けられるアプリだった。
もしも、携帯など、端末のない児童には無償で
タブレットを配るということだった。
寄付者からは、自分の名前は伏せておいてくれと頼まれた。
片桐という個人だった。
まだ、申し出を受けた学校側は、半信半疑だったが、
今、日本中の学校が恩恵を受けていた。
子供達は新しい技術を当たり前のように受け入れた。
ARKはまたそれを学んでいた。




