第七章 第三幕 告っちゃえ
優作は、瀬戸を呼び出した。
「これから、経験のない災害が起きるだろう。」
「ARK、予想される災害は?」
モニターに幾何学模様が揺れている。
『人が動けなくなります。通常の物流は止まります。』
優作は間を置いた。
「我が社は、技術で乗り切る。」
「そのためにお前が必要だ。」
瀬戸は息を呑んだ。
「お前を正式に暁テクノスの社長としたい。」
「俺に……出来るでしょうか?」
「ああ。」
優作は、瀬戸を見つめながら話した。
「お前は、優秀な技術者のまとめ役だ。」
隣で聞いていた凛が自分のことのように
嬉しそうな顔をした。
「おめでとう。瀬戸君。」
「ありがとう。凛さん。」
優作は二人を見ていた。
そして、少し頭を掻きながら、小さな息を吐いた。
「それからだが、お前たちのことはみんな知っている。」
瀬戸は少し青ざめた。
「隠す意味があるのか?」
凛も下を向いた。
「今、もう言ってもいいんじゃないか?」
会議室のみんなが二人を見ていた。
「これから先、予測不能なことが起きるかもしれない。」
「後悔を残す前に、やるべきことをするんだ。」
二人に後ろを振り向くように促した。
「瀬戸さん。ガンバ!」影山が言った。
「うるさい。」小さく言った。
「……」瀬戸は少し考えた。
「今ここで、ですか?」
「今が、タイミングだろ。」
優作が答えた。
真壁と庄屋が期待した顔で見ている。
「やる時はやると、信じているぞ」
真壁が言った。
瀬戸は覚悟を決めて、息を吸った。
「凛さん。あなたにふさわしい男になりたくて、
頑張ってきたつもりです。」
「結婚してください。」
凛は少し照れたが、
「はい。喜んで」と言った。
みんなで拍手した。
里美はおめでとう。と二人を祝福した。
だが里美は、これだけは、相談して欲しかったと、
後で優作に詰め寄った。
窓の外の暁商店街はいつもの景色だった。
タエさんと弟子が、お客さんに手を振っていた。
カブさんが、新しい本を仕入れていた。
トキさんが、駄菓子屋でスタッフと子供達にお菓子を売っていた。
こどもたちがお菓子を手に、走って帰って行く。
少しずつ、商店街に人が戻ってきていた。
幕間 片桐邸。
優作は、
家に帰っても書斎でARKとコードを打っていた。
里美が書斎にコーヒーを持って来てくれた。
優作がキーボードを打つ姿を見て、
「私も優作さんみたいにキーボード打ちたい。」
少し微笑みながら
優作の目の前で、キーボードを打つ真似をした。
「……」
何も言わなかった。
結婚できて良かったと思った。
ARKも何も言わなかった。




