第七章第一幕 予兆
某国で、未知のウイルスが流行り出した。
すでに病院は満床だった。
待合室は人で埋まり、
廊下まで患者が溢れている。
病院の入り口にも長い列ができていた。
だが医師たちは戸惑っていた。
これほど強力な感染症なのにもかかわらず、
過去に事例がない。
誰も知らないウイルスだったからだ。
発熱。
頭痛。
咳。
など、
最初の症状だけみれば、ありふれた感染症だった。
だが患者数の増加速度が異常だった。
感染経路もわからない。
治療法もない。
ただ、患者だけが増えていった。
最初の患者が死に、
看護師にも同じ症状が現れ始めた。
休憩室の奥で恐怖で泣いている看護師がいた。
ある担当医師は、ふるえているが、
気丈に立ち向かおうとした。
逃げ出したいが、逃げるわけにはいかなかった。
しかし、
結局、彼も感染し、
そして帰らぬ人となった。
彼が最初の犠牲となった医師だった。
数日後、
死者数が増えていった。
人々は疑心暗鬼になり、
互いに距離をとるようになった。
隣の国にも感染者が出るようになった。
これほど被害が拡大しているにもかかわらず、
政府はまだ動かなかった。
隣の国でも死者が出た。
ここでようやく新型ウイルスの発表があった。
しかし、その頃には、パンデミックの条件は揃っていた。
データセンタの内部で、
何者かが静かに次の確率計算をしていた。
同じ頃、
ARKもまた、世界の異変を観測していた。
誰も知らない。
この感染症が自然発生ではないことを。
そして、
それを承認した者がいたことを。




