第六章第四幕 ロードキング
優作は、影山を呼んだ。
「人材派遣の会社を作るのにお前に動いて欲しい。」
優作はそう言った。
「俺のプロジェクトですか?」
「人材育成と派遣事業、俺はお前が一番適任ではないかと考えている。」
「たくさんの社員と、社員旅行、行けたら楽しいだろうな。」
優作は窓の外を眺めながら言った。
影山の眉がぴくりと動いた。
「……何人くらいまで、OKっすか」
優作は口角をあげ、
「お前が連れてくる奴は全て採用だ。」
「ただし、お前が派遣会社の社長だ。」
と言った。
影山は背中を何かで叩かれた気がした。
顔から笑顔が消えた。
「社長って……俺がですか?」
「その通りだ。」
「庄屋、構わないか?」
優作は庄屋に視線を向けた。
「正直、私の右腕にしたいと思っていました。」
庄屋は肩をすくめた。
「しかし、規模を拡大するためには、しかたないですね。」
影山は息を呑んだ。
しかし、仲間にしたい連中には当てがあった。
数日後
キュルキュル――ブオン。
影山のZ2のエンジンが目を覚ました。
フォォォン――。
今日も快調に加速していく。
影山が向かった先は、
バイクチーム、ロードキングのアジトだった。
店の駐車場には、何台ものバイクが並んでいる。
「影山さん、ちわっす」
仲間たちが影山に声を掛けてきた。
「おう。」
影山は片手を上げ、答えながら店の奥に進んで行った。
「よう、赤井、元気にしてたか?」
「影山さん、ちわっす」赤井は頭を下げた。
影山は一番奥の席に座り、コーヒーを注文した。
「今日はな、折り入って話がある。今日は全員、俺の奢りだ。
なんでも頼んでいいぞ。」
「本当っすか、あざっす」
仲間たちが歓声を上げた。
マスターが出てきた。
「やかましい。」
マスターが顔を出した。
「すんません。今日は大事な話があるんで」
影山はマスターに向き直った。
「貸切でいいっすか?」
影山がマスターに言うと、
「初代じゃないですか、お久しぶりです。」
とマスターが言った。
「あれ、親父さんは?」
「もう引退です。自分が二代目です。」
マスターは少し笑いながら言った。
「そうか、ロードキングと、この喫茶ヘブンと、
両方とも二代目だな」影山も笑いながら言った。
「でだ、まあ食べろ。話はそれからだ。」
影山は、店の奥に飾られたロードキングの旗の下、
真ん中の席に腰を下ろした。
「飲めや歌えのドンちゃん騒ぎ」
影山は、誰にも聞こえない小さな声でそう言った。




