第六章第三幕、owl
瀬戸は、ドローン企業のことを詳しく調べた。
その会社の創業までを追ったインタビュー記事を見つけた。
その会社の社長は、向井陽一と言った。
四十代後半。
元エンジニアで、空を飛ぶドローンに可能性を見出した人物だった。
特に、移動が困難な場所でも物資を届けることができる。
そこに魅力を感じたと書いてあった。
瀬戸は、一ノ瀬と共に向井のもとに向かった。
そこは、思っていたよりも小さな町工場だった。
「ごめんください」凛はいつものように菓子折りをもってきていた。
中から、油で手を汚した男が出てきた。
「何か用ですか?」
男はそう言いながら、こちらに歩いてきた。
「暁グループの一ノ瀬と申します。こちらは瀬戸です。」
凛は名刺を差し出した。
「あなたのドローンについて、ぜひお話を伺いたいと思いまして。」
「本日は、そのお願いに参りました。」
「丁度よかった。」向井は言った。
「私のドローンは、数十キロ先の顧客のもとに
正確に物資を届けることが出来る。自動制御で届けることも出来る。」
「しかも音も驚くほど静かに飛ぶことが出来る。」
向井は嬉しそうに言った。
「これは、フクロウの羽を参考にした。フクロウは、獲物に気づかれずに飛ぶだろ?
こういう改良は自然界の動物を参考にしたりするんだ。」
それから少し悔しそうな顔をした。
「トヨトミ自動車の開発している全固体電池。」
「あれがあればもっと、大きな荷物を、もっと遠くに運べるんだがなぁ。」
向井は肩をすくめた。
瀬戸は少し考えてから口を開いた。
「暁グループはトヨトミと提携しているので、全固体電池の話を通せるかもしれません。
ただ、確認はしなくてはいけませんが。」
向井の目が変わった。「本当に?」
「はい、ただ、今日はその話をしにきたわけではありません。」
「向井さんのドローンを使って、僻地向けの物流網を作りたい。
その提携の話をしにきました。」
向井は少し考えた。そして、
「俺は自分の会社を吸収されたくない。」そう言った。
凛は言った。「あなたの会社はあなたのものです。」
「私たちは誰かの会社を奪うために来たわけではありません。
ただ、社会の中で取り残される人を一人でも減らしたいんです。」
「大体が札束で、俺の会社を買いに来た。」向井が言った。
「……奴らとはちがうみたいだな。」
「我が社には創業理念があるんですよ」瀬戸が言った。
「腹を空かせたガキにパンを届ける。」
「……よく分からんが、あんたらが本気なのは分かった。」
向井が続けた。
「それで?」
「そのパンをどうやって届けるつもりなんだ?」
瀬戸が話した。
「搬送センターに集約する。
そこから自動運転で中継地点へ運ぶ。
最後の数キロを向井さんのドローンで届ける。」
「……よく分かった。」
「ドローンだけじゃなく、自動運転のトラックと組み合わせるのか。」
「いけそうだな。……その話、乗った。」
凛と瀬戸はお互いを見合わせ、頷いた。
近くの山からフクロウの鳴き声が聞こえた。




