第六章 幕間、Z1の継承
藤三郎は、庄屋がZ1に乗って走り去ったことを思い出していた。
正義の悪党だからいいんです。庄屋は確かにそう言った。
バイクのエンジンオイルを交換しながら、翔太を思い出す。
ネジをレンチで閉めながら、黒川を思い出していた。
「やっぱり、そうだよな。」藤三郎はそう思った。
携帯の音が鳴った。
「庄屋です。すいませんでした。間に合いました。」
最初に言われた。
「そうか。」とだけ答えた。
「申し訳ないですが、バイク、影山にそちらに持って行かせてもいいでしょうか?」
ほとんど反射的に怒鳴ってしまった。
「馬鹿野郎、そのバイクは誰でも乗っていいものじゃない。俺が今から取りに行く。」……つい言ってしまった。
バツが悪いので、そのまま携帯を切った。
病院までは、バイクを乗せるためのトラックで行った。
庄屋が、バイクの前で、待っていた。車から降りて近づくと、
深々と頭を下げられた。
「……それで、里美さんの様子はどうだ。」
「意識を取り戻しました。まずは安静にとのことです。」
「そうか。」
「あの……。」
藤三郎は静かに話した。「このバイクはな、俺が親友のために組んだバイクだ。」
「はい。」
「そいつの遺言だが
正義の悪党を名乗る奴にこのバイクを託すといったんだ。」
「……」庄屋は何も言えなかった。
「免許、とれ。」
「は?」
「大型免許だ。」
「……はい。」
「お前たちの会社の理念は?」
「腹を空かせたガキにパンを届ける。……です。」
「それだけじゃないだろ。」
「そのために仕組みを変える。これは、わがままな世界征服だ。」
「それだ、完全に正義の悪党じゃねえか。」
「でもそれなら、優作さんじゃ……。」
「奴も好きだが、……腕が立たねぇんじゃなぁ。」
庄屋は何も言えなかった。
「とにかく、バイクは持って帰る。免許取ったら取りに来い。いいな。」
「……はい。」
藤三郎はそれだけ言うと、バイクをトラックに乗せて帰って行った。
庄屋は何が起こったのかまだ理解していなかった。




