第六章 第一幕
里美が復帰して、一年が経ち、暁グループはさらに大きくなった。
拠点では、会議室で、庄屋が大型モニターの前に立っていた。
「今期は、業績が大きく伸びています。」「ARK頼む。」
『承知しました。』
モニターに必要なデータが、タイミングよく映し出されていく。
「まず、自動運転事業が保険業と合わせて、大幅な黒字となりました。
長距離移動コストが大幅低減しました。事故率は0%です。ただ、我が社の理念として、過疎地域への配送を検討しています。こちらの方は、いかにコストをかけずに、利益を出していくのか、考えなければなりません。」
「知ってたけど、データで見るとすごいっすね。」影山が言った。
「そうだろう。」庄屋は少し口角を上げた。
「暁商店街、暁Payの利用者も大幅に増えています。商店街以外でも使えるように、外地域の交渉もしています。俺の、いや、私の商事も、大規模農業事業の自動化、そして、水産の産廃の肥料としての再利用。それらを運送が橋渡しをして、全体で大きく利益を出しています。水産の陸上養殖所もさらに増やす予定です。ただ、やはり、人手不足は解決していません。」
優作は黙って話を聞いていた。
窓際のみんながよく見えるデスクで、口元を隠すように両手を組み、全員を見ていた。
発言がないのを確認すると、優作は話し出した。
「どうして人手不足になると思う?」
影山が言った。「人口が減っているからですかね」
「それもあるが……やりたい仕事と、そうでない仕事のマッチングのせいだと思う。」優作は答えた。
「だから、私は、正社員対応の派遣会社を作ろうと思う。」
真壁が言った。「正社員が増えれば、会社持ちの費用が増えます。」
「我が社は、全員正社員で取引する。私は我が社を社会のインフラにしたい。」
真壁は腕を組み、大きく息を吸って吐いたが、何も言わなかった。
「コストは増えるが……人が安心して働ける社会を作りたい。」
「優作兄貴!素敵っす。」影山の本音が、つい口から出てしまった。
会議室のみんなが、失笑した。
「こほん。」里美が咳払いをした。
「次は派遣会社ね。」里美は優作に尋ねた。
「ああ、あと、過疎地域の配送には、ドローンを使った配送システムを考えている。トラックで近くまで行けば、そこからドローンで配達する。そういう仕組みを作りたい。」
「技術的なことは、瀬戸、お前とスタッフに任せたい。」優作は言った。
「頑張ります。」瀬戸は少し緊張したが、強い口調で言った。
「いいとこ見せれるっすよ。」影山が耳打ちした。
一瞬だけ、瀬戸は凛を見た。
瀬戸は小さな声で「うるさい。」と言った。
里美は「誰も反対意見はないのね。」と言った。
誰も反対しなかった。
拠点の庭には、里美が植えたひまわりが咲いていた。




