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不器用な善意は、世界を再構築するAIに選ばれた 秘密結社ARK 世界征服の物語  作者: My little world
第ニ章 暁商店街

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第五章第三幕「式典」

数ヶ月後

今日は、暁グループの自動運転開始の式典だった。


特設ステージには、初代CEOとして、神崎里美が立っていた。

最初の挨拶をするためだ。


その後ろには、真壁、瀬戸、一ノ瀬、影山がいた。

庄屋は一人、拠点で留守を守っていた。


庄屋が一人でコーヒーを飲んでいると、立花が隣から尋ねて来た。

「今日は一人か?」

「はい、今日はひとりぼっちです。」庄屋は笑いながら答えた。

「影山は?」

「みんなと一緒に式典に行っています。

やつには、俺の右腕になってもらうつもりです。勉強ですよ」庄屋はまた笑った。

「ふん。」立花は鼻を鳴らした。

「副社長にでもするつもりか?なまいきな。」

庄屋は口角をあげながら、「意外に優秀なんですよ、人付き合いも得意だし。」

「それに......俺には、霧島警備もありますからね。」

「親父さんか…… 。」小さく立花が言った。

「賢坊は,......バイクに乗らんのか?」実は、ずっと気にしていたことを聞いてみた。

「……免許はもっていますよ。」庄屋はこともなげにコーヒーを飲みながら答えた。

「そうか……。」立花は少しだけうれしそうだった。

--

屋上は、少し風が吹いていた。

リン・ウェイは、なぜ今そこに立っているのか分からなかった。

オメガに指定された場所に来ただけだった。

ビルの屋上、普段は鍵がかかっているはずなのに、今日はなぜか開いていた。

屋上から数百メートル先で、式典は始まろうとしていた。

里美がマイクを持って,スピーチの準備をしている。

ふと、足元を見ると,黒いケースが置いてあった。よく知っている形だった。

汗が噴き出して来た。自分がそこにいる理由が突然理解できた。

オメガがインイヤーから話しかけてくる。

『あなたは、何を止めるためにそこに立っているのですか?』

『あなたは見ました。未来のシミュレーションを、また誰かが死ぬ未来を。』

「違う、違う、私はただ、説得するために……。」

『メールは無視されました。ARKはもう止まりません。』

『もう……あなたしかいません。』

『あなたの妹は生きることを選べなかった…。』

気がつくと、黒いケースの留め具に指先が触れていた。

開けようとは思っていなかった。でも自然にケースを開いていた。

リン・ウェイは、ライフルを組み立てると、スコープから里美を見ていた。

特設ステージでは、里美が晴れやかな笑顔でスピーチを始めていた。

優作は、Satio 副社長の席で、里美を見ていた。

その時、インイヤーからARKの声が聞こえて来た。『……優作。』

「何だ。」優作は小さな声で答えた。

『近くで、傍受できない暗号通信があります。』

「どういうことだ?」

『分かりません。』

『ただ、会場周辺200メートル以内です。』

優作は辺りを見渡した。すると、ちょうどビルの屋上で光るなにかが見えた。


屋上でリン・ウェイはスコープで里美を見ていた。手が震える。

なぜ自分がライフルで人を狙っているのか、分からない。理解できない。

でも、自分がやらないと誰かが死ぬ。

でも…… 引き金に指をかけたまま、ためらっていた。

里美のスピーチが続く、

「今日これから、私たちの新しい自動運転システムが始まります。

皆様、どうか、素晴らしい、未来を見て来てください。」

「未来をみてください。」……あの日、自分が送り出した妹にかけた言葉だった。

激しい胸の締め付けで、考える余裕がなくなって来た。

『あなたの妹は、いまも報われていません。』オメガの一言だった。

ウェイの指が、ついに引き金を引いた。

サイレンサーがついているため、聞き慣れた音ではなかった。

パスっと小さな音だった。だが、会場では、里美が倒れ、血を流していた。


屋上で何かが光った。優作は咄嗟に声を出した。「里美!」

里美は声を聞いて振り返った。その瞬間何者かに撃たれ、腹部から出血した。

優作は里美の所に駆け寄ると、傷口に手を当て血を止めようとした。

……とまらない。「ARK、救急車だ、医者をさがせ、向こうのビルだ。証拠を確保しろ。」

『承知しました…。』会場内は騒然となった…。伏せる人、逃げる人、

パニックになって大きな声を上げる人もいた…。


「……里美さん。」凛が会場にいた医者を連れて来た。

瀬戸が救護スタッフと、タンカを持って来た…。

優作が少し震えながら、「血が……止まらない……止まらないんだ。」と言った。

「退いてください。」医者が言った。「近くに病院がある。

とにかくそこへ連れて行く。」救急車が来た。

病院につくと、すぐに手術が始まった.....。


屋上で、リン・ウェイは放心状態だった。

倒れた里美、抱き抱える優作がこちらを見た。目が合った気がした。

とんでもないことをしてしまった。ライフルから手を離し、ウェイは泣いていた。

もうどうしていいか分からなかった。里美がメイと重なって苦しかった。

オメガに呼びかけた。何度も、何度も。

しかし——……返事がなかった。

霧島警備のスタッフが数人、屋上に来た。リン・ウェイは確保された。


手術室の前、仲間全員でいた。優作は座ることすらできなかった。

優作のスーツは里美の血で少し赤黒く変色していた。

「優作さん。」真壁が言った。

「狙撃したのは、ホライズンのリン・ウェイだそうです。」

とても遠くで話をされている気がした。よく聞こえなかった。

「どうしてこんなこと……。」凛は泣いていた。…肩をだく瀬戸。

医者が手術室から出て来た。「傷口は塞ぎました。しかし——血液が足りません。

今、血液センターから血液を送ってもらっています。」

『優作。』優作のインイヤーからARKが話しかけて来た。

『血液センターから出た車が、渋滞に巻き込まれて動けません。』

『このままでは、間に合いません。』

「そんな、頼む、何とかしてくれ。」優作は震えていた。

『約束は出来ませんが、最善を尽くします。』


拠点では、庄屋と立花が話をしていた…。

立花が、結婚するまで、三重にいたこと。

実はじいちゃんと知り合いだと言うこと。子供の頃の庄屋には、

興味のあることではなかったので、少し驚いていた。

『庄屋、緊急事態です。』突然拠点のスピーカーからARKの電子音声が鳴った。

「会場でなにか起きたのか?」庄屋は持っていたコーヒーカップを置いて、

声がする方に近づいた。『里美が撃たれました。』

『血液が必要ですが、渋滞で車が進みません。

バイクなら、移動可能ですが、影山のバイクは輸送中の車に遠いです。間に合いません。』

『あなたなら、バイクの運転が可能だと思います。』

『拠点からなら、間に合うかもしれません。』

庄屋は立花をみた。「今すぐ動くバイクはありますか?」

「……一台だけなら、毎日必ず整備するやつがある。」

「お願いします。貸してください。」

「……ついて来い。」立花はたちあがり、店に足を向けた。

そこには、黒い、Z1が止めてあった。

立花からヘルメットと、鍵を受け取った。

エンジンをかける。一発でエンジンがかかった。

Z1を中心に、何かを纏った空気のようなものを感じた。

「じゃあ、お借りします。」庄屋は立花に言った。

「本当に免許持ってるんだろうな?」

「持ってますよ、中免ですが。」

立花は何か言いそうになった。

「正義の悪党だからいいんです。」庄屋は逃げるようにバイクを走らせた。

立花は、何も言えず、その場に立ち尽くしていた。


渋滞は続いていた。原因は大型トラックが斜めに停車していたことだった。

GLのトラックだった。

庄屋はすり抜けて、血液輸送の車をすぐに見つけた。ARKの指示だった。

輸血パックを受け取ると、病院に向けて、アクセルをあげた。

『そこ、左に曲がってください。』曲がると赤信号だった。青に変わった。

『直進です。』アクセルを開ける。

フォーン、エンジンが唸る。『そこ、右です。』

曲がると、車のいない細い道だった。スピードが乗る。風を切る。

エンジンが熱くなっても止まることはなかった。止まるわけにはいかなかった。

病院につくと、スタッフが入り口で待っていた。

輸血パックを渡して、手術室のまえに行った。

「庄屋、すまない。」優作が言った。「俺は……何も。」言葉が続かなかった。

全員で里美の無事を祈った。

優作は手術室のランプを見た。変わらなかった。廊下を少し歩いた。戻った。

自分の手をみた。凛が何か言った。聞こえていた。でも、理解できなかった。

座った。瀬戸が隣に座り、何か言った。頷いたが、なにを言ったのか、わからなかった。

また立った。ARKが何か耳元で言った。返事をしなかった。

赤いランプはまだ変わらなかった。ふと見ると庄屋が座ったままこちらを見ていた。

隣に座った。お互い何も喋らなかった。


手術中の赤いランプが消えた。


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