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不器用な善意は、世界を再構築するAIに選ばれた 秘密結社ARK 世界征服の物語  作者: My little world
第ニ章 暁商店街

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第四章 第七幕 暁商店街

 夕暮れ時だった。

商店街のアーケードに、灯りが灯り始めていた。

マイケルは商店街の入口に立った。しばらく、見ていた。

「……思ったより、小さいですね」

「今日、二度目ですよ」庄屋が言った。

「そうですね」マイケルは少し笑った。

「——工場と同じことを言ってしまいました」

優作は黙って歩き始めた。

――――――

青文堂の前を通った。

古い本屋だった。ガラスのショーケースに、古書が並んでいた。

店の奥に、老人が座っていた。

マイケルは足を止めた。「……本屋ですか」

「はい」

「古そうですね」

「ずっと、ここにあります」

老人が顔を上げた。優作を見た。

小さく頷いた。優作も、小さく頷いた。

マイケルはその様子を見ていた。「……顔見知りですか」

「はい」

「どんな人ですか」

優作は少し間を置いた。

「最初に、我々を信用してくれた人です」

マイケルは老人を見た。老人はもう本を読んでいた。

「……それだけですか」「それだけです」

――――――

タエの店の前を通った。

小さな惣菜屋だった。暖簾が出ていた。

中から、いい匂いがした。

庄屋が「腹減りましたよね」と言った。

マイケルは暖簾を見た。「……入れますか」

「どうぞ」

四人で入った。

カウンターに、女性が立っていた。

七十代。小柄。でも——目が、若かった。

「あら、優作さん。久しぶりだねぇ」

「はい」

「最近、全然来ないじゃないか」

「忙しくて」

「嘘ばっかり」

タエは庄屋を見た。「賢ちゃんも久しぶり」

「お久しぶりです」

「霧島さんが自慢してたわよ」

「社長さんになったんでしょう」

「まあ」

「大したもんだよ、まったく」

「そんなことないですよ」

タエはマイケルを見た。「あの、外国の方?」

「はい」マイケルは頭を下げた。「マイケルと申します」

「まあ、日本語が上手ねえ」

「ありがとうございます」

「何食べる?」

「おすすめを」

「じゃあ、定食ね」

タエは厨房に消えた。

マイケルは店を見回した。古いカウンター。

壁に貼られた手書きのメニュー。常連らしい老人が、

端で黙って食べていた。「……古い店ですね」

「はい」

「でも——」マイケルは少し間を置いた。「温かい」

庄屋は少し笑った。「ここで、最初の会議をしたんです」

「会議?」

「暁グループの、最初の会議です」

「この店で」

「はい」

「何人でしたか」

「三人です」

「今は」庄屋は少し間を置いた。「数えきれないくらい、増えました」

マイケルは優作を見た。優作は味噌汁を飲んでいた。

――――――

食堂を出た。

立花モーターズの前に来た。

シャッターが、全開きになっていた。

中から、エンジン音が聞こえた。油の匂いがした。

一人の男が、バイクに向かっていた。70代。

がっしりした体格。手が、油で黒かった。

マイケルは足を止めた。「……バイク屋ですか」

「はい」

「古いバイクが多いですね」

「好きな人間がいるんです」

「修理できるんですか」

「ずっと、やっています」

男は振り返らなかった。ただ、バイクに向かっていた。

マイケルは少し間を置いた。「……以前は、半開きだったんですか」

庄屋は少し間を置いた。「……そうですね」

「なぜ、全開きになったんですか」

庄屋は少し間を置いた。「……あの人に、聞いてみてください」

マイケルは男の背中を見た。男はまだバイクに向かっていた。

何も言わなかった。ただ、手を動かし続けていた。

――――――

商店街を歩き続けた。

アーケードの奥に、制服を着た男が二人、立っていた。警備員だった。

マイケルは足を止めた。「……警備員がいますね」

「はい」

「最近、置いたんですか」

「二年前からです」

「なぜ」

庄屋は少し間を置いた。「……大切な場所だからです」

「それだけですか」

「大切な場所を守る理由は、それだけで十分です」

マイケルは警備員を見た。二人とも、背が高かった。

がっしりした体格だった。でも——目が、穏やかだった。

「……地元の人間ですか」

「違います。俺の地元から来てもらいました」

「なぜ、」

庄屋は少し間を置いた。「……信頼できる人間に、頼みたかったからです」

マイケルは庄屋を見た。「……あなたの地元は」

「三重です」

「遠いですね」

「はい」

「それでも、来てくれたんですか」

「はい」

「なぜですか」

庄屋は少し間を置いた。「……呼んだから、来てくれました」

「……それだけです」

マイケルは少し間を置いた。「……それだけで、来るものですか」

「来ますね」

「なぜ言い切れるんですか」

庄屋は少し笑った。「……俺が、呼んだからですよ」

マイケルは庄屋を見た。長い間、見た。

何かを考えているようだった。

――――――

商店街の端まで来た。

マイケルは振り返った。アーケードの灯りが、夕暮れの中に並んでいた。

人が行き交っていた。買い物をしている老人。

子供の手を引いた母親。常連らしい男が、タエの店に入っていった。

「……暁Pay、ですか」マイケルが言った。

「はい」庄屋が答えた。「全部の店で使えます」

「決済システムも、自分たちで作ったんですか」

「はい」

「なぜですか」

「この商店街から、始まったからです。ここが全部の起点です」

マイケルは少し間を置いた。「……片桐さん」

「はい」

「一つだけ、聞いていいですか」

「どうぞ」

「なぜ、ここを見せてくれたんですか」

優作は少し間を置いた。

「ホライズンが何をしたいのか——ここを見せれば、分かると思ったからです。」

「どういう意味ですか」

「技術だけを売りに来たのか。それとも——」

「……一緒に、何かを作りに来たのか」

マイケルは少し間を置いた。商店街を見た。

青文堂の灯り。タエの店の暖簾。立花モーターズの、全開きのシャッター。

「……答えは、もう出ています」

マイケルは静かに言った。「一緒に、作りたい」

「根拠は何ですか」

「ここに来る前は、技術の話をするつもりでした」

「でも——今は、違うことを考えています」

「何を考えていますか」

マイケルは優作を見た。「……この場所が気に入りました。」

優作は少し間を置いた。「……それが、聞きたかった」

――――――

商店街を出た。

夜の空気が、冷たかった。

マイケルは振り返った。

アーケードの灯りが、暗闇の中に浮かんでいた。「……片桐さん」

「はい」

「来週、技術者を連れてきます」

「はい」

「でも——」「……その前に、一つお願いがあります」

「なんですか」

マイケルは少し間を置いた。「タエさんの定食——もう一度、食べに来てもいいですか」

庄屋が笑った。「いつでもどうぞ」

「ありがとうございます」

マイケルは商店街を見た。最後に、もう一度。「……いい場所ですね」

優作は答えなかった。

でも——口元が、わずかに緩んでいた。

――――――

車に乗り込む前に、マイケルは同僚の女性に小声で何かを言った。

女性がタブレットに何かを打ち込んだ。

庄屋が小声で優作に言った。

「……何を打ち込んでいるんっすかね」優作も小声で返した。

「さあ」

「気になりますね」

「ああ」

「ARKに調べさせますか」

「いらない」

「なぜですか」

優作は少し間を置いた。「……まずはこちらが信じるんだ。」

車が、走り出した。テールランプが、夜の道に消えていった。

庄屋は商店街を見た。「……優作さん」

「ああ」

「マイケルさん、本物ですかね」

「さあ」

「また、さあですか」

優作は何も言わなかった。

庄屋は少し間を置いた。

「でも、タエさんの定食をもう一度食べたいと言いましたよ」

「ああ」

「それって——」「本物の証拠じゃないですか」

優作は少し間を置いた。「……そうかもしれないな」

暁商店街の灯りが、春の夜に滲んでいた。


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