第十六幕 波紋の広がり
その日、それは、一つの小さな雫のようなものだった。
結果が出る。また別の誰かがそのアプリを入れる。
噂になる。トラックドライバーたちは、飛びつくようにそのアプリを入れた。
別の地区。「……試してみる」二台、三台とSatioのアプリは、
どんどんインストールされていった。
噂が流れ、気づき、試し、確信し、波紋は大きく広がっていった。——————
数日後。各地のGL拠点で、おなじような報告が増えていった。
契約達成件数増加。報奨金発生。過去最高。グラフが異常な上昇を示していた。
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Satio 拠点 庄屋がモニターを見て息を呑む。
「成功報酬がやばいです。」
「やれば利益が出る。当然だ」
「どこまでいきますか」
すこし、優作は間をおいた。
「……どこまでもだ」
ただ、元の場所に返しただけだった。
第一場: 業者の声
物流会社の社長から電話が来た。里美が電話に出た。佐藤のトラックの会社だった。
「報奨金はいりました。」「久しぶりに社員にボーナスがだせそうです。」
里美が言った。「よかったですね」
社長はすこし申し訳なさそうに「あなたが我が社に来た時、私はあまり、
相手をしなかった。佐藤が正しかった。」
「あなたに来てもらえてよかったです。」
里美は少し笑った。「ありがとうございます。」
里美は受話器を置いて、庄屋に話しかけた。
「ショーケンさんがGL物流の下請け会社をしらべてくれたから、
うまくいったのよ」
「過去が武器になるって、本当になりましたね」
優作が口を開いた。「最初からそのつもりで仲間にした。」
庄屋は苦笑いをして「それ、もっと早く言ってください」
拠点は笑いに包まれた。
第二場
黒川の端末のモニターが開いた。
報奨金の支払いが、急増している。GLオフショア口座の残高が、
どんどん削られている。
「とめろ」
『契約上、不可能です。我々が決めた条項です。』
「……自分で決めたルールで焼かれているわけか」
『……』
黒川は、窓の外を見た。
「……片桐」
「お前は最初から、……最初からこれをねらっていたのか」
マンションの一室は、無言で返してきた。
黒川は、コートを取った「すこし、自分で考えてみる。」
『……』
「……」
部屋を出た。エレベータに乗った。窓に映る自分を見た。
いつもと同じ無表情、だが、いつもとは少し違って見えた。
ドアが開く、黒川は外に出た。ただ歩いていた。
ただ、次の手を考えていた。それだけだった。




