第十四幕 優作のわがまま
月曜日、Satioの拠点に見慣れない車が止まった。役所からの車だった
「すいません、おはなしがありますが」
里美が検査員二人と対応する。
「通報がありました。立入検査させてもらえますか?」
検査員は書類を見せた。建築基準法違反の疑い。衛生基準の未達。消防設備の不備。三点
里美は書類を受け取り、優作に目配せした。
里美は検査員に向き直り答えた。「ご指摘の通りです。ただ、早急に対処いたしますので、少し時間をいただけませんか」
「営業停止の可能性も——、」
「五日でいいので時間をください。お願いします。」
検査員はお互いに少し話し合い,「五日で対応できますか?」
「できます。お願いします。」
「ここにいる全員で、直します。」
検査員は五日後にまた来ると言って帰った。――――――
真壁がファイルを開いた。「許可はとってありましたので、法的に戦えます。ただ—」
「戦わない」優作は答えた。
「五日で直す。文句が出ない状態に」
真壁は声を荒げた「たった五日で?無理です。人材が足りません。」
「それでもやるんだ」
「どうして」
「俺たちの目的は、世界中のガキにパンをとどけることだ——」
世界中にベーシックインカムを構築して、
子供が飢餓や貧しさで死なない世界を作る。
今の世界を変える。つまり、世界征服だ」
「この程度の障害、簡単に乗り越えられなくて、どうして世界征服ができるんだ」
真壁は黙った。
立花は、真っ直ぐに優作を見た。
「...... 本気、なのか?」
「私のわがままです。しかし、どうしても実現したい。」
「夢でもみているのか?だが——今は力を貸してやる。」
「……図面を出せ、見てやる」
影山が言った「立花さん!」
「でかい声をだすな、なんとかしてやる」
立花は昔の仲間に電話をかけた。大工、配管工、電気工、
みんな古くからの仲間だ。
――――――
五日間、立花を中心に、職人たちが動いた。
影山のバイク仲間が、工具を持って集まった。鈴木が資材を調べ、カブで走り回った。
真壁がARKを使って、最短ルートでの資材調達と、役所への申請書類の自動生成をサポートした。
里美が検査員との連絡を取り続けた。瀬戸が品質を調べた。
庄屋が資材の調達ルートを開拓した。
ARK が工程を管理した。凛がみんなに握り飯を作った。
優作はコードを書き続けた。
誰も弱音を吐かなかった。
五日後の朝、全ての工程が終了した。――――――
立花が立ち上がり、商店街を見渡した。「……よし」
里美が言った「おつかれさまでした。」
午前十時。検査員が来た。商店街を歩いた。書類を確認。
「…………合格です」
影山が叫んだ「やったぞー」
立花が「うるさい」と言った。――――――
その夜。黒川の端末が報告した。『検査に合格しました。』
「……五日で直したか」
『はい』
「次は、吉田という農家と接触しろ」――――――
翌朝。 吉田邸に、見慣れない車が来た。人の良さそうな、男が二人、
義雄に挨拶してきた。
「はじめまして、GL物流と申します。」
「なんのようだ」
「吉田さんの野菜、すばらしいですね、ぜひ私共と取引を、
していただきたくて、参りました。」
「出せるだけなら、出そう」
「いいえ、そうではなくて、我が社の専属農家になっていただきたく、
ご相談させてください。」
「どういうことだ」
「吉田さんの野菜を時価の1.2倍で買わせていただきます。」
「そのかわり、よそには売らないでいただきたい。」
「……帰れ」
「吉田さん、規格外の野菜もすべて買い取りますよ。検討いただけませんか」
「帰れと言った。」
「……タエちゃんの店の惣菜は、うちの野菜じゃないとだめだ」
男たちはしばらく立っていたが、吉田が振り向くと、消えていた。
吉田は無言のまま、畑仕事を続けた。――――――
次の日の朝、トラックでタエの店にきた。「義雄さん。いつもありがとう。」
「…きのう業者がうちに来た。買い占めたいといってきた。」
「え」
「断った」
「ありがとう」
「ただ、何が起きているんだ?」
「心配しないで、大丈夫」タエは笑顔で吉田を送ったが、
すぐに拠点に足を運んだ。会議室には優作がいた。
「たいへんだよ」
「知っています。」
「タエさん。」
「なんだい」
「規格外野菜はもっと使える場所があります。」
「学校の給食や福祉施設。吉田さんの野菜が、
必要な場所は、たくさんある。」
タエは答えた「吉田さんに話をしてみるよ」
「ありがとうございます。」
「嫌だと言われたらそれまでだからね」
「もちろんです。」
タエは帰って行った。
里美が言った。「タエさん自分から来てくれたね」
「そうですね」
「吉田さん。OKしてくれたらいいね」
「はい」
優作は窓を見ていた。タエが電話で話しながら帰る背中を見た




