第十六章 第十八幕 2つの問題
キランバ村。学校。
ダニエルは次の人生の舞台としてアフリカを選んだ。
だが、NPOの指示に従ってやってきただけで、村の名前すら知らなかった。
「……キランバ村か、思えば俺も無茶苦茶だ」
ダニエルは苦笑いをした。
今日も教壇に立った。しかし誰も来ない。
そこで、職員室でこの村の成り立ちや、学校設立の経緯などを調べていた。
「おや、Satioという企業、何故か心に引っかかるな」
それは、優作と里美、庄屋が最初に開いたコンサルタント企業だった。
「この企業の出資で学校ができたのか……」
ダニエルは、ここにも日本企業が絡んでいるのかと思った。
「どういう経緯でこの学校を建てることになったのだろうか」
当時の代表の名前は、神崎里美だった。
資料には、里美の言葉が記されていた。
我々は世界から貧困をなくし、子供たちが今日の食事に困らない世界を作りたい。
そのための第一歩として、ここに学校を寄進したいと思います。
腹をすかせたガキにパンを届けたい。私たちの理念はこの言葉です。
ダニエルはこの言葉を聞いたことがあった。
「……優作さん」
ダニエルは、当時の資料をもう一度、最初から目を通した。
「ならば、手はある」
ダニエルは風香に電話を掛けた。
少し時を遡る。
暁研究所。
風香は突然訪ねてきた男性に戸惑っていた。
「どうしても会いたくて来てしまいました」
ARKはコーヒーを出しながら一言。
『拠点でも話はできるでしょ?』
「それでは困るからここに来ているんだ」
男性はARKを睨みつけた。
「私は、貴方にふさわしい男になるために頑張ってきたつもりです」
「でも……そもそも貴方と接点がなければ、どうすることもできません」
風香は戸惑った。そもそも、異性として意識していなかった。
同時に心のなかでは――
(ついにモテ期到来!)
と浮かれていた。
「それに、なんですかこのARK!風香さんもしかして、結婚する気がないんじゃないですか?」
「……」
少し風香はカチンときた。
「それは、赤井さんには関係ないんじゃないですか」
風香に睨まれ、一瞬でカエルのように固まった赤井だった。
「と、とにかく、私、好きです。私と前向きに付き合ってください」
それは、赤井の不器用な、いや、不器用すぎる告白だった。
その直後に風香のスマホに電話が掛かってきた。
ダニエルからの、これ以上ないほど間の悪い電話だった。




