第十六章 第十七幕 厳しい現実
次の日。
ダニエルは現地スタッフと話をした。
「教科書がなくては、どのように授業をしたものか……」
ダニエルは困り果てて尋ねた。
するとスタッフから信じられない答えが返ってきた。
「教科書など、必要ないです」
ダニエルはスタッフの顔を見て、目を見張った。
「……どういう意味ですか」
「一週間ここで暮らせば分かります」
スタッフは何かを諦めているようだった。
初日、ダニエルが教壇の上に立った時、子供たちは一人も来なかった。
二日目。まだ誰も来ない。忙しいのだろうか?
三日目。スタッフに尋ねても、苦笑いをするだけだった。
四日目。村を歩き回ると、子供たちは汗をかきながら家の手伝いをしていた。
五日目。やはり子供たちは仕事をしていた。
一週間が過ぎた時、現地スタッフの言葉を思い出した。
結局、一人も学校に来なかった。
ダニエルは、村人が当然のように物資を持って帰ったのは何故かと尋ねた。
現地スタッフは両手を上げた。
「仕方がないんですよ」
当初、村人たちは学校の建設を受け入れなかった。何故なら、子供たちを学校に行かせれば、労働力を奪われてしまうから。
「だから、学校に子供たちを通わせるために、来れば物資を配るようにしたんです。
でも、それが間違いの始まりでした」
いつの間にか大人が物資を受け取りに来るようになった。
そう、諦めたように現地スタッフは、ダニエルに伝えた。
ダニエルは息を吐き、現地スタッフに尋ねた。
「どうして現状をそのままにしているのですか」
現地スタッフは悪びれることもなくこう答えた。
「下手に動けば命が狙われる。それに、今のままでも生きていくことはできる」
「……」
ダニエルは、これは簡単ではないなと思った。




