第十六章 第十五幕 慟哭
アメリカ支部。
静香はダニエルを見下ろし、ダニエルは震えながら静香を見上げていた。
「なぜ叩かれたか、わかる?」
ダニエルは答えなかった。
「一つは私のお父様の分。一つは私のお母様の分。そして最後はあなたを許せない私の分」
「わかる?あなたは、死んで終わりではないの」
ダニエルは頭を下げた。
「許されるとは思ってない。でも、じゃあどうすればいい?」
静香は刺すような視線でダニエルを見つめた。
「なら、逃げるな」
静香はそれだけ言うと、ヘリに乗り去っていった。
バリバリバリバリ。
ヘリの音が聞こえなくなるまでダニエルはへたり込んでいた。
そして……。
「う……ううう……うおおあああっ!」
ダニエルはむせび泣いた。それは痛みに苦しむ悲鳴にも、獣の唸り声にも聞こえた。
――やがてダニエルは両膝を抱えた。
どれほどの時間が過ぎたのか分からなかった。
やがて立ち上がると、ダニエルは自分のデスクに戻り、遺書を破り捨てた。
辞表だけを残し、研究所を後にした。
自宅に戻ったダニエルは、すべての資産を現金化した。もうアメリカには帰らないと決めていた。
そしてバッグ一つを手に、アフリカに向かった。
目的地は、今も内戦が続く国だった。
子供たちは、まるで道具のように使われていると聞いた。
ダニエルにはまだ自分がそこで何ができるのかは分からなかった。
ただ、安全な環境で、所長を続けるのは許されないと思った。
最も過酷で、それでも助けを求めている場所はどこか? 自分の次の居場所はどこか?
そう考えた時、自然と頭の中にアフリカが浮かんでいた。
ダニエルは子供たちのために教師になることにした。
しばらくしてダニエルはNPOに連絡を入れた。




