第十六章 第十四幕 Quiet Fury
アメリカ支部。
バリバリバリバリ。
ヘリが轟音を上げながら、研究所のヘリポートに着陸した。
風で吹き飛ばされそうになったダニエルは手すりにしがみついた。
予想外の出来事に唖然としたダニエルは、ヘリの中をうかがった。
最初にヘリから降りてきたのは人間ではなかった。
ウイーン『ダニエル。見つけました』
姿を現したのはBe9だった。
「そう」
静かな女性の声がした。
そして次に降りてきたのは風香の母、静香だった。
ダニエルは手すりにしがみついたまま、静香を見つめていた。
「9ちゃん。私がしてもらいたいことわかる?」
静香はBe9に話しかけた。
『もちろんです』
Be9は素早く動くと、ダニエルの首元の襟を掴み、手すりの内側に引きずり戻した。
静香はダニエルに近づいた。
ダニエルは訳もわからず、その場に座り込んで静香を見上げていた。
静香は少し微笑んで、ダニエルの顎を片手で持ち上げると、三回平手打ちをした。
ダニエルはたまらず口を開いた。
「な、何をするんだ!私が何をしたというんだ!」
静香は一瞬目を閉じ、再び開いてから言った。
「人殺し」
ダニエルは震えて静香を見つめた。
少し時を遡る。
ロボット工場。
『風香のお母さんがちょうど近くの街にいる。しかもBe9と一緒に』
「ほんとに?」
風香は静香に電話をかけた。
静香はアメリカで日本食レストラン事業を成功させ、全土にチェーン店を開いていた。
その日は近くの町に新店舗を出すためヘリで訪れていた。
リンリンリリンリン♪
静香のスマホが鳴った。
「どうしたの?ママが恋しくなった?」
静香は微笑みながら尋ねた。
風香は冗談には答えず、切り出した。
「助けて欲しい人がいるの」
風香は事情を説明した。
静香はヘリに乗り、研究所に飛び立った。
ヘリの中でBe9は静香に質問した。
『ママ、怒ってる?』
「ええ」
静香はそれ以上何も言わなかった。




