第十六章 第十三幕 正体不明
旧GL研究所。
現、暁グループ。
アメリカ支部。
ツー、ツー、ツー。
ダニエルは電話を切った。
ダニエルは暁グループ傘下になった研究所で、引き続き所長を務め、後進の育成をしてきた。
暁グループは、GLを傘下に収め、オメガを隔離することに成功した。
あれから一年以上が経ち、ダニエルの後を引き継ぐ人材も現れた。
「……もういいだろう。思い残すことはない」
ダニエルは研究室でポツリと呟いた。ARKはそれを聞き逃さなかった。
ロボット工場。
風香は切られたスマホから目を離すとARKに話しかけた。
「ダニエルは今どこにいるの?」
『暁グループのアメリカ支部です』
「……ダニエル……どうすると思う」
『風香が思った通りに動くと思う』
「そうだね、なにか手はある?」
風香は日本からでは到底間に合わないと思った。
『一つだけ手があります』
「ほんとに?」
ARKは風香に耳打ちした。
アメリカ支部。
ダニエルは、自分のデスクに座ると、今までの経緯、謝罪と感謝、それらを遺書にしたためた。最後に辞表を書いた。
それらを自分のデスクの上に置くと、外に出た。
丘に建てられた研究所からは、街を一望することができる。
最後に街を眺めると、もう思い残すことはないと思えた。
「さて、最後はカッコつけて死ぬか」
ダニエルは晴れやかな笑みを見せ、再び研究所の中に入っていった。
屋上に着き、下を見た瞬間、めまいがした。
ダニエルは額から流れる汗を感じながら手すりに手を置いた。
手すりを越えた。膝がガクガク震えてきた。
どうしても震えが止まらなかった。
数十メートル下を見たまま、何十分も動けなかった。
ダニエルは息を吐き、そして吸い込んで空を見つめた。
目を閉じて飛び降りようとした、その瞬間。
バリバリバリバリ。
大きな轟音が近づいてきた。
それは、来る予定ではなかったヘリだった。




