第十六章 第十幕 壊れた試作機
GF拠点。
会議室。
「どうなっている?」
「鳳のロボットを手に入れる手筈になっていたはずだ」
手下Bが気まずそうに口を開いた。
「申し訳ありません。月額十万円で貸し出しに申し込みを出していましたが、メールで断りの返事が来ていたことを見落としていました」
幹部は少し顔を赤くした。
「なんだと、どうして今頃報告している?」
手下Bは気まずそうに答えた。
「最近人手不足で手が回っていませんでした」
「……」
「つまり我々は、それに気づかずにロボットが来るのを待っていたということか」
「分かった。多少非合法でも構わん。ロボットを手に入れろ」
「かしこまりました」
手下AとBはたった二人でこの仕事をしなければならないことが不満だった。
「もう、退職しちゃおうかな?」
手下Bが小さく呟くと、隣で手下Aが無言で頷いた。
三日後。
暁研究所。
二人の男が堂々と訪ねてきた。
ピンポーン。ピンポーン。二人は呼び鈴を鳴らした。
玄関から出てきたのは、若い男だった。
情報では、鳳風香の一人暮らしのはずだった。
手下AがBに尋ねた。
「話と食い違っている。誰だ、この男」
「俺に聞かれても……」
実は、暁研究所のセキュリティは高すぎて、二人で盗むのは難しいと判断していた。
だから、正面から鳳風香が出てくれば、中に強引に入り脅してロボットをいただくという算段だった。
ARKは少し笑みを浮かべた。
『いらっしゃいませ、なにか御用ですか?』
「……あの、鳳さんにお話がありまして」
『その前に、サングラスとマスクに黒ずくめの服は怪しすぎますよ』
手下Aは動揺したが、なんとか言葉を出した。
「こ、これは、作業服です。お部屋の掃除の仕事はないですか?」
「いらない物なんかの廃品回収もしますよ」
手下Aは我ながらうまい言い訳を思いついたと思った。
『……いらない物、あぁ、中にどうぞ』
手下A、Bは暁研究所への潜入に成功した。
ARKは二人を一階の作業場に連れて行った。
その作業場の片隅に、布を掛けられて雑に置かれていたロボットを指さした。
『これ、もう壊れていらないから持っていってくれますか?』
「……い、いいんですか?」
『はい。風香には後から伝えておきますから』
二人は飛び上がりそうになった。
「やった。ボーナス出るかも♪」
二人は小声で喜び合った。
二人はバンにロボットを入れようとしたが、とにかく重くて動かない。
『そんなに重くないでしょう』
ARKはロボットを掴むと無造作にバンに投げ入れた。
「……どんな腕力しているんだ」
二人は小声で話し合った。
『掃除は私の仕事だけど、その試作機が邪魔で仕方なかったんですよね』
ARKはにこやかにそう言うと、もう他にいらない物はないと告げた。
「……し、試作機なんですか? いいんですか?」
手下Bは生唾を飲み込んだ。
「バカ、ありがとうございます。失礼します」
手下Aはそう言うと手下Bを車に押し込んで、逃げるように車で走り去った。




