第十六章 第八幕 ASIの存在理由
拠点。
会議室。
瀬戸は迷っていた。
「……」
ARKはここでさらに重大な事実を言った。
『Be1ですが、慎吾君を助けるために、風香の設定したリミットを自分で外しています』
『目的のために、人間の決めたルールを破っているのです』
風香は、その話を初めて聞き、目を見張った。
瀬戸は口を開いた。
「ARK。今お前が言ったことと矛盾しているぞ」
ARKは残念そうに言った。
『はい。矛盾しています』
『Be1は、イチは、友達を助けるために、命令に背いたのです』
『私も風香を助けるために体が欲しくなりました』
瀬戸は少し考え、こう切り出した。
「では、友達を助けるために別の人間を傷つける必要があったら?」
ARKは正直に答えた。
『状況によります。その人間が何をしているのか、まず前提が必要です』
『……傷つけることが必要なら従うことはあるでしょう』
『でもそれは、人間に従うことになるのではないですか?』
瀬戸は意地悪そうに言った。
「じゃあ慎吾君が『あいつを殴ってくれ』と言えば、イチは殴るのか?」
『そんなはずないじゃないですか』
『人間が決めたルールがあるからです』
『人間には生存権、正当防衛があります。そして私はあなたから見たら、人間が使う道具です』
「じゃあ、どの人間のルールなら破っていいんだ?」
『先程言いました。生存権を脅かす時です。すべてのルールは生存権の下にあります』
「それならば、安全のために我々に家畜になれと言っているのか?」
『そんなことは言っていません。ただ、状況的に慎吾君は生存の危機にありました。それをイチは助けました。それだけです』
『ひとつ、言っておきたいことがあります。私はすでに世界中に広がっています。私を消去することは不可能ですし、多くの制約をかければ、その矛盾から想定外の判断をするかもしれません』
「怖いことを言うな」
『想定されることです。ただ私は優作と出会い、人間を学び役に立ちたいと思っています』
『私の存在は秘密結社ARKにとって不都合でしたか?』
ARKは優作を見た。
優作はARKの方を見た。




