第十六章 第四幕 皮算用
鳳邸。
風香の寝室
ベッドから起きたばかりの風香にメイドがメモと朝食を持ってやってきた。
「お嬢様、保育園からの申し込みですが、有料だと話すと五件の内、四件が受け入れを断念しました」
風香は苦虫を噛んだような顔になった。
「それで、有料でもいいと言った保育園は?」
メイドはメガネを少し指でつまんで上げ、メモを読み直した。
「えっと……エトワール国際学院幼稚部ですね」
「そんな所、前に電話したかしら?」
風香は断られて、沢山電話をしたので、どの保育園、あるいは幼稚園に電話をしたのか、覚えていなかった。
メイドはもう一度メガネをつまんで上げ、メモを読んだ。
「一体あたり、月十万円でどうかと申し込みが出てます」
風香は「そう」と軽く答えた。
(そうだよ、単価が高い幼稚園に売り込んだらいいんだ)
風香は皮算用をしながら、鼻を膨らませた。
「ARK」
『はい』
「都内と、都内近郊の幼稚園でBeシリーズを月十万で借りたい所がないか、メールを出して」
『了解しました』
風香は、どこでも話ができるのに、今は暁研究所にしかARKの体がないのが少し不思議な気がした。
数日後。
鳳邸にメールが届いた。
思っていたより多くの返事が返ってきた。
残り四箇所と契約することができた。
「ムフ、ムフ、ムフフフ♪」
風香は我慢しても笑いが出てきてしまった。
『風香、気持ちが悪いよ』
ARKが突っ込んだ。
「うるさいわね、誰のせいだと思っているの?」
『でも……実際に契約の取れるメールを出したのは僕だよね』
「……」
「それでも、月に100万円よ、一億円稼ぐのに9年は掛かるじゃないの」
風香はドヤッているARKにイラッとした。
『風香、契約書よく見た?』
「え?」
風香は契約書の内容を見ていなかった。
「契約……一体あたり、100万円!」
風香は契約書を何度も見直した。
『風香はBeシリーズの価値を分かってない』
「どういう事」
『Beシリーズのベースは僕だよ、そして、僕はBeシリーズのデータを使って、人と同じように動くことができるようになった』
『つまり、今のBeシリーズは学習済みの使えるロボットって事だよ』
『彼らは外国語も普通に話せるし、授業をすることもできる』
『教育用ロボットとして、十万円は安すぎるよ』
『それに、何かあった時には、自分より園児を優先して助けることができる』
『エトワールの申し込みは断ったよ、他の幼稚園の方が単価が高かったからね』
『今回メールを送った所は園児の月謝が40万以上のところだけだよ』
『一年で一億二千万円だよ、お釣りが出たね』
風香は何も言えなかった。
『どう?優秀でしょう』
ARKは再びドヤッた。
「……」
(いつのまにか、AGIがASIになっていた)




