第十五章 最終幕 My body
数日後。
風香は警察署に呼びだされた。
先日の事故に関しては、こちら側の過失はないと話がついたはずだったが、ロボットが飛び出したのと、人が飛び出したのでは、法律が違う。
判断次第では都合が悪くなるかもしれない。
風香は気が重かった。
警察署の受付に行った。
「あの、鳳風香と申しますが……」
受付の婦警さんはニコリと笑った。
「署長が待っています」
風香は署長室に通された。
中には少しふっくらとした中年男性が制服を着て待っていた。
テンちゃんの録画した映像を見せられ、あなたのロボットで間違いないかと、再び確認を迫られた。
風香は、やはり何かあるのかと緊張した。
「はい。……間違いありません」
署長は笑みを浮かべた。
「素晴らしいです」
想定と違う言葉だった。
「はい?」
署長は感謝状を手に読み上げた。
人命救助の感謝状だった。
隣の部屋には、慎吾の母と、テレビ局が待機していた。
慎吾の母は、風香の手を取ると、少し涙を浮かべ、感謝の言葉を述べた。
「本当に、ありがとうございます。映像見ました。あなたのロボットのおかげです」
風香は嬉しかった。Beシリーズは自分が育てた子供のようなものだった。
でも、風香の考えは少し違っていた。
「ありがとうございます。でも、私が助けたのではなく、私のロボットが自らの意思で慎吾くんを助けたのです」
風香はそう言った。たしかにそう言った。
テレビ局の記者はその言葉を聞き漏らさなかった。
記者は風香に尋ねた。
「それは、どういう意味でしょうか?」
その頃、Beシリーズは充電中でARKにデータを送っていた。
ARKは、そのデータに驚いていた。
本当なら、慎吾を助けるために飛び出しても間に合わないはずだった。
イチは自らの意思でリミットを解除していた。
それは、本来なら風香以外はできないはずだった。
それでも、慎吾を助けるために、風香が設定した制限さえ、自らの意思で退けてみせた。
ARKは現実世界のボディを持つBeシリーズが羨ましくなった。
そして、Beシリーズのことばかりで、風香は暁研究所に顔を出していないことを思い出した。
ARKはBeシリーズの設計図を元に、自らのボディの製作を密かに始めた。
何週間も暁研究所に顔を出さなかった風香がそれに気がついたのは、鳳邸に高額な請求書が届いてからであった。




