第十五章 第九幕 異世界転生
公園。
トラックは急ブレーキを掛けた。
普通、トラックは荷崩れを気にして、滅多にフルブレーキを掛けない。
だが、子供が飛び出してきた。
ドライバーは、本気で車を止めるつもりだった。
ギギギー。
タイヤの独特な嫌な匂いをさせながら、トラックは止まろうとした。
しかし。
ガシャーン。
慎吾は目の前のトラックに足がすくんで動けなかった。
小さくうずくまり目を閉じた。
キュルキュルキュル。
トラックのエンジン音だけが耳についた。
膝が痛い。
ゆっくりと目を開けると膝を擦りむいていた。
「……生きてる」
慎吾はゆっくりと起き上がり、吹き飛んだ腕を見た。
「え?」
その引きちぎれた腕を見た後、自分をかばうように横たわっているイチを見た。
風香は青い顔をしながらイチのもとに駆け寄った。
「イチ、大丈夫?」
『……まだ現世なの? 異世界転生すると思ったのに……』
「なにいってるの」
慎吾はイチの声を聞いて泣き出した。
「イチ、ごめん。ごめんよう」
イチはふらふらと起き上がった。
『大丈夫だから、泣かないで』
そう言うと、残った手で慎吾の頬の涙を拭った。
そして風香に向き直ると、
『痛すぎるから、痛覚を切って』と言った。
風香はイチの背中を開けるとすぐにスイッチをOFFにした。
「これは、ちょっと想定してなかった。ごめん」
トラックのドライバーが降りてきた。
「急に飛び出してきて、危ないじゃないか」
ドライバーは保護者だと勘違いして風香に文句を言った。
しかし、子供は膝を擦りむいたが無事だった。
そしてトラックを見た。
少しバンパーが凹んだだけだった。
腕のちぎれたロボットを見て察した。
「……このロボットが、助けたのか?」
駆けつけたテンちゃんが言った。
『最初から見ていました。あなた、前を見ないでアクセル踏みましたね』
ドライバーは怪訝そうに声の方を向いた。
同じ顔をしたロボットが九体自分の周りを囲んでいた。
『すべて録画しています』
テンちゃんはドライバーにそう告げた。
ドライバーは混乱した。
そして、
「警察、警察を呼ぼう」
そう言うとスマホを取り出した。




