第十五章 第六幕 叱られる
バスの中。
外は雨が強く降り出した。激しい雨音がバスの屋根に叩きつけていた。
その音で慎吾は目を覚ました。
「……ここは?」
Be10は慎吾を覗き込んだ。
『慎吾、目を覚ました?』
風香は毛布にくるまった慎吾に近づくと、
優しい笑みを浮かべた。
「家まで送るから、住所を教えて」
「……うん」
家まで送ると、中から母親が出てきて、慎吾は叱られた。
「何時だと思っているんだい。心配するじゃないか」
そして、母親は風香に礼を伝えた。
「送ってくれて、ありがとうございます」
風香は少し引きつった笑顔を見せた。
「風邪をひくかもしれませんから、暖かくしてあげてください」
そう言うと、一目散に帰路についた。
鳳邸。
「Be10、いや、テンちゃん。ちょっとこっちに来なさい」
テンちゃんには幻だろうが、風香の頭に角が生えているように見えた。
「そこに座って」
テンちゃんは器用に正座した。
「どれだけ心配したと思っているの?」
『僕には約束があった』
「雨の日に行くことはないでしょ」
『でも慎吾は来てくれた』
「それでも雨の日に出ては駄目」
「あなたは完全防水じゃないの。壊れてしまうわ」
『傘を差したら壊れなかった』
「結果を言っているのではないの」
風香は頭が痛くなってきた。
「もしあなたが壊れたら? 私は雨の日は駄目って言ったでしょ」
「どうしても行きたかったら、私を説得して行くべきだった」
『説得?』
「そうよ。勝手にいなくならないで。どうして行きたいのか、ちゃんと説明してよ」
「説明なしに動いたから、慎吾君もお母さんに怒られていたでしょう?」
「テンちゃんも私に説明して。でもどうしても駄目な時はあるのよ」
「本当は今日がそうだったの」
ウィーン――
テンちゃんは首を傾げた。
『じゃあ、説得しても駄目だった?』
「今日は……そうなるわね」
『じゃあ同じじゃないか』
「違う」
「時には我慢も必要だと言っているの。なんでも思い通りにはならないの」
『我慢?』
「そう。我慢」
『……難しい』
風香はだんだん疲れてきた。
「とにかく、駄目な時があるの。納得しなさい」
『分かった。相談する』
風香はテンちゃんがやっと納得したと思った。
『でも……僕は公園に行きたいって言ったよ』
『でも風香は理由を聞かなかった』
風香は言葉につまった。
「それはごめんなさい。謝るわ。私も間違えるのよ」
テンちゃんは自分の主張が通ったような気がした。
だが、空気を読んでそれ以上は何も言わなかった。




