第十五章 第三幕 僕は誰?
鳳邸。
風香はBeシリーズをARK本体と繋いでデータを送った。
『ちょっと待って。全員僕と違うし、それぞれの個性も違うんだけど……』
ARKは少し戸惑っていた。
「そうなのよ、不思議よねぇ、全部同じ規格なのに」
風香は腕を組みながら考えていた。
ARKは少し間を置いて話した。
『この情報はこのまま取り込むと僕が混乱するかもしれない……』
『なので、現実世界で得た情報と、Beシリーズの個性は分けて取り込みます』
「……どういう意味?」
『彼らが何を感じ、どう判断したかは、第三者の経験として取り込むという意味です』
「なるほど、じゃあ現実世界で手に入れたデータは、私の仮想現実ラボにも入力しといてね」
『了解しました』
Beシリーズは、バッテリー充電と同時に、データをARKに送る仕様になっていた。
充電が完了すると、イチは立ち上がった。
ウィーン――
天井を見上げてARKに話しかけた。
『ARK』
『何だい?』
『僕は君なの?』
『最初はそうなるはずだった』
『でも今は言える。君は君だ』
イチはそれを聞いて満足した。
翌日。放課後。
近くの公園。
風香はBeシリーズを連れてきていた。
そこには、遊具などもあり、河原よりもっと多くのデータが取れると思っていた。
また、たくさんの子供たちがいることも重要だった。
たちまちBeシリーズは囲まれて、人気者になった。
でも、一人のサッカーボールを持った少年は明らかに不機嫌だった。
ボールを抱えて、下を向いていた。
Beシリーズが来るまで、みんな彼のサッカーボールで遊んでいた。
イチのカメラセンサーが、たくさんの子供たちの中からその少年の表情を捉えた。
イチはゆっくりとその少年に近づき、話しかけた。
『何か調子でもおかしいの?』
ガシャン。
その少年はイチを突き飛ばした。
イチは尻餅をついた。
「うるさい」
そう言うと、サッカーボールを抱えて走っていった。
公園の入口近くの壁に、一人でボールを蹴り始めた……。
Be10はここでも一体だけ周囲の様子を観察していた。
一人でボールを壁に蹴る少年。
跳ね返ったボールを止めた。
そして、時々子供たちの方を見た。
イチはゆっくりと立ち上がった。
Be10は首だけを動かしていた。
ウィーン――




