第十四章 第七幕 幕間
数時間後。鳳邸。
研究所の落成を祝うはずだったパーティーは、いつの間にか秘密結社ARKの結成式になっていた。
パーティーを終えて鳳邸へ戻った後、ARKには一つ気になることがあった。
『風香』
「なあに?」
『僕と優作は秘密結社を立ち上げるつもりでここまで来たけど、結局ずっと曖昧なままだったよね』
「そうね、暁グループは秘密結社じゃなかった。ただの企業グループだったわね」
『空港で、「怪人になろうかな」って言った時には、もうマスクのこと考えてたの?』
「バカね、あの時は冗談だったわよ」
風香は笑いながら答えた。
『じゃあ、どうしてマスクを?』
「効果的だからよ」
「あなたが大企業の社長だったとするわね。それまで見下していた小さな企業から『助けましょうか』と言われて、素直に受け入れられる?」
『……難しいかもしれない』
「でしょう? 相手が誰なのか分かれば、人間は肩書きや会社の規模で判断するわ」
「でも、正体の分からない怪人が突然現れたら、相手が自分より上か下か判断できないでしょ?」
ARKは少し間を置いた。
『だから、肩書ではなく、言われた内容で判断するしかなくなる?』
「そうよ。マスクは顔を隠すだけじゃない。相手の先入観も隠してしまうのよ」
ARKは風香が人間の先入観まで計算してマスクを作ったことを知った。
「それに……カッコいいじゃない」
風香はニコリと微笑んだ。
『じゃあ今回の全員にマスクを配ったのは?』
「全員に、暁グループの社員ではなく、秘密結社ARKの構成員になったと自覚してもらうためよ」
『世界中のガキにパンを届けるという、同じ理念を持った仲間として?』
「そうよ。会社も肩書きも違うけど、マスクを被れば全員同じ怪人でしょう?」
「それに、GLみたいに利益優先にならないようにブレーキになると思うの」
『マスクがブレーキになるの?』
「人間は忘れるのよ。会社が大きくなって、利益が増えれば、何のために始めたのかを忘れてしまう」
「でも、あのマスクを見るたびに、今日みんなで膝をついた時のことを思い出すでしょう?」
ARKは、優作に向かって全員が膝をついた光景を思い出した。
『だから、誰かに売ったりあげたりするのは裏切りなの?』
「そうよ」
『風香は、忘れてしまう人間を信用していないんだね』
「違うわ。忘れても、また思い出せると信じているのよ」
「少なくとも、レーザーで消し炭になったマスクのことは覚えていると思うわ」
風香は少し意地悪そうに笑った。




