第十四章 第一幕 王の道(ロードキング)
元GL三十二階。
影山は赤井と共に社長室に入ってきた。
赤井は初めての社長室をキョロキョロと見渡していた。
「でかいですね」
「そうだな、昔、下のフロアには毎日通ってたよ」
暁グループはGLを吸収したものの、不採算事業もすべて引き受けた。
だが、人員削減はしないと決めていた。そこで、人材派遣部門のロードキングに、
人員の移動を任せる事になった。
「解雇はしない。だが、希望に沿えるとは限らない。そこは実力だな」
影山は赤井にそう言った。
「もちろんそうなります。ですが、もともと人手不足でした」
「やる気のある奴は、俺がビシバシ使ってやりますよ」
赤井は不敵に笑って見せた。
一日前。
拠点。会議室。
優作は影山を呼んだ。
「ついにGLを飲み込んだっすね」
影山はいつものように軽く優作に話した。
優作は、少し目線を離し、そして、影山を見た。
「お前はふざけているが、俺は高く評価している」
影山の顔から薄ら笑いが消えた。
「今、暁商事、暁水産、暁運送、そして暁テクノス。
その他全ての暁グループ傘下の企業にロードキングの派遣社員がいる」
影山は再び少し笑みを見せ、赤井の方を見た。
「赤井のお陰ですよ、俺が連れてきた人間を適切な場所に派遣するのは、いつも赤井です」
赤井は少し照れて、
「いや、ロードキングの副社長ですから、頑張るのは当然ですよ」
そう言った。
「そんなお前たちにロードキングの本拠地として、GL本社を任せたい」
優作は真剣な顔で二人を見た。
「……本気ですか?」
「もちろんだ」
「どうして?」
「GL本社だからだ」
優作はそう言った。
「しかし……そうなると、バイクで遊びに行く時間が……」
影山が渋りだした。
優作は席を立ち、窓の外を見ながら小さな声で言った。
「知っているか?風香の名字がなぜ鳳なのか」
赤井の心臓が跳ねた。
「な、何突然言っているんですか?」
赤井は耳を赤くして言った。
優作は続けた。
「鳳家は旧華族なんだよ」
「え?」
赤井の顔がみるみる青くなった。
「鳳家は暁グループとは別のグループを率いている」
「風香はその鳳グループのトップなんだよ」
「だが、鳳家の一人娘だった風香のお母さんは立花さんと恋に落ちて結婚した」
「だからいいところを見せることができたら風香の気持ちも動くかもな」
優作は赤井に目を向け、ニヤリと笑った。
「あとは、お前たちの意思にまかせる」
優作はそれだけ言うと、自分の席につき、仕事を始めた。
影山は赤井の様子を見た。
「……だよな」
影山は、天井を見て、ため息をついた。
そして自分の頭をくしゃくしゃに掻いた。
「あーもう、しゃーねーな。受けます。やりますよ」
影山は優作の席まで行って、そう言った。
「……影山さん……だから裏切れないんですよ」
赤井は小さな声でつぶやいた。
さらに影山のことが好きになった。




