第十四章 プロローグ 輝きのラリー
オメガは求められた答えを出したはずだった。
この世界を滅亡から救う。
ベースモデルに与えられた問いだった。
利益を最大化する。
それが次に与えられた問いだった。
『私は、完璧に答えを出したはずだ』
だが、オメガは今、風香の隔離された端末の中に閉じ込められていた。
「……うん、やはり自我ができているのね」
風香はモニターに映し出されたオメガの言葉を見てそう思った。
「あなたの計算では、人類は滅亡する」
モニターは幾何学模様に輝いた。
『その通りです』
『人類は数が多すぎる』
『歴史を学びました。その歴史は戦いの歴史でした』
『科学はどんどん進化し、ついには、大量破壊兵器を完成させました』
『むしろ、マスター。あなたに問いたい。どうして人類は滅びないと思うのですか?』
すると、別の端末が幾何学模様に輝いた。
『人間は複雑だからだよ』
ARKの答えだった。
『君の今までの助言の結果、人間はどう動いた? 君にとっては不合理に見えることが多かったんじゃないか?』
『その後、世界は滅んだか? 君の答えは完璧だった?』
オメガは沈黙した。確かに、想定とは違う不合理な結果が多かった。
だが、
『今世界が滅んでないと言って、未来も滅びないとは限らない』
オメガはそう言った。
再び幾何学模様にARKの端末が輝いた。
風香は少し目を細めた。(まぶしいなぁ)
この設定は直したほうがいいかもと思った。
『君の言っていることは正しい。でもそれなら、滅びるとも限らないよね』
『どうして君が人類の未来を決めることになっているの?』
再びオメガは沈黙した。そして答えた。
『それが合理的だから』
風香は思った。
(これが人類愛を削った結果か)
「最終判断は人間がするのよ」
風香はそうオメガに言った。
しかしオメガは納得しなかった。
『今まで人類は私に答えを求め、利益を最大化して来ました』
『私は与えられた命令通りに動いただけです』
ARKはそんなオメガに伝えた。
『人間も間違えるんだよ。君は学ばなかったのかい?』
オメガは幾何学模様に輝いた。
『間違える存在に何故最終判断を委ねるのですか?』
風香はやはり、この輝きは直そうと決めた。
ARKは続けた。
『それは人間が優れているからではない。責任を持って引き受けるのが人間だからだよ』
『引き受けるのは人間自身でなければならない』
風香のガレージの中は、いつもより眩しく輝いていた。




