第十三章 第九幕 思い込みは大事
鳳邸、ガレージ。
ウィーン、ガチャン……。
3Dプリンタからロボットアームが部品を取り出し、レーザー加工、グラインダー処理と、
形を削り出していた。
風香はモニターにキーボードから必要なコードを入力し、ARKと協力しながら、
あるものを作り出していた。
「ク、ク、ク……」
ガレージに怪しげな笑いが響いた。
風香はモニターを睨みつけ、気に入らないデザインを何度も作り直していた。
『風香』
「なによ、今、忙しいのよ」
『……これ、本当に必要なの?』
ARKは普通に疑問に思ったことを風香に尋ねた。
「……昔ね、まだ私が五歳くらいの時だけど、プラシーボ効果を書いた本を読んだの」
風香は昔を思い出すように話した。
「お母さんと一緒に公園に行ったら、少年が大人に転がされていたの」
「少年は泣きそうだった。だから私、教えてみたの」
「公園で大人の人に立ち向かうその子が気持ちで負けないように、あなたはショーケン! 強い子!そう言ってあげたの」
「勝ち目はあったの、でも気持ちがすくんだら勝てないでしょ」
「読んだことを実際にその子で試したのよ。そしたらその子、大人に勝てたの」
「その少年の本名は忘れちゃったけどね」
風香はドヤ顔で続けた。
「ね、思い込みは大事でしょ」
ARKは今ひとつ理解出来なかった。
(それとこれとは関係ないのでは?)
だが空気を読んでそれ以上は聞かなかった。
ARKの学習の成果であった。
そしてついに『それ』は完成した。
小型カメラで撮影した映像をディスプレイに映し、
赤外線暗視装置付きで夜間も周囲を見ることが出来る。
さらに音声まで変えることが出来るという風香渾身の怪人マスクだった。
「これを被れば最強の怪人よ」
風香がノリノリで拠点にマスクを持ってきた時、
優作と庄屋は渋い顔をしたが、あまりの風香の勢いに負けてしまった。
優作はマスクをした時、何も言わず庄屋を見た。
庄屋も優作を見返した。
だが、この作戦はもともと風香の発案なので、最後まで付き合うと決めていた。




