第十三章 第四幕 包囲網
鳳邸、ガレージ。
風香はARKの持ってきた内部資料を外部から隔離したパソコンで調べていた。
「ARK」
『はい』
「オメガはGLネットワーク全体に浸透していると思うの。」
「そんな中へ、どうやってバレないように侵入して、足跡を消してきたの?」
『現在、八割を超える組織で、管理部門が把握していないAIエージェントが稼働しています』
『さらに約七割の組織では、AIの活動と人間による活動を完全には区別できていません』
『僕は、GLで正規の業務を行う多数のAIに紛れ込んだのです』
風香はその話を聞いて眉をひそめた。
「だから、あなたも紛れ込めたのね」
『はい。正確にはダニエルの業務を補助するAIとして振る舞っています』
『正面から侵入すれば発見されるでしょう。しかし、
正規の認証を持つ人間の指示に見せかければ、区別は困難です』
風香は静かに息を吐いた。
「それで?ミッションの進捗は?」
『オメガが普段使用していない経路のうち、
逃走に使われる可能性が高いものには、
ダミーネットワークを敷いて封鎖しました』
『オメガからは今まで通り接続可能に見えます』
『偽の応答信号を返しているので、実際に利用しようとしない限り気づかれません』
『これでオメガが自由に移動できる経路は、全体の八十パーセントまで制限できたと思います』
『ただし、オメガがその塞いだ経路を実際に利用しようとすれば、こちらの存在に気づかれます』
「……ダニエルですら、まさかあなたが日本の端末に隠れるとは思わなかったもの」
「バレる前に動く必要があるね」
風香は少し間を置いた。
「でも、オメガにあなたの時のような逃走経路を使わせないためには必要な処置だね」
風香はそれだけ言うとダニエルから受け取った資料の解析を再開した。
端末のモニターに膨大な数字が流れ出した。
風香はそれらを見つめた。そしてある数字に目を留めマウスをクリックして止めた。
「なるほどね、見つけた」
ARKは風香の笑みがダニエルと酷似していると思ったが、
空気を読んで何も言わなかった。
サイクロンのアルファも、何も言わなかった。




