第十三章 第三幕 城壁のほころび
GL開発研究部。
ダニエルはバランスシートをずっと調べていた。
さすがはGLだった。
総資産もとんでもない額。
現金もある。
損益計算書を見ても、売上は巨大だった。
当然利益も出ている。
「……まぁ、知っていた」
ダニエルは小さくつぶやいた。
仕方がないので、次は子会社を調べ始めた。
GL Energy Holdings
GL Infrastructure Partners
GL Global Finance
など………。
さらに、その子会社。
孫会社。
SPC(特別目的会社)
そして、その先にあるオフショア法人
GL Resources Cayman
一人でここまで調べるには時間がかかりすぎる。
それでは、スパイであることが露見しかねない。
しかし、ARKと協力することによって、
その膨大な企業構造を驚異的な速さで解析していった。
ARKの幾何学模様が小さく輝いた。
「だから、もう少し、その目立つ輝き、なんとかならんのか?」
ダニエルは小さく文句を言った。
『……同じ金額が何度も出てきます』
『資金が複数の法人を循環しています』
『売上が計上されているのに、代金がなかなか入って来ていません』
『帳簿上では利益があるのに現金が増えていません』
『同一の資金が、複数の法人を経由して戻っています』
ダニエルはARKの持ってきた情報を調べていた。
「……」
ダニエルの顔が少しニヤけた。
「見つけた」
それは最初のほころびだった。
ダニエルは情報を素早く自分の端末に移した。
「あとは風香に任せよう」
『了解しました』
幾何学模様は静かに消えていった。
鳳邸、ガレージ。
風香は、モニターを見ながら、
ツーリングに行った時、聞かされたサイクロンの問題点を洗い直していた。
(この研究、もしかするとバイク事故を減らせるかもしれない)
風香は研究に没頭していた。
その時、突然一つのモニター画面が幾何学模様に輝いた。
「……ARK?」
『GLの城壁に、最初の穴を開けてきました』
「また学んできたのね、今日は比喩なの?」
風香はARKの持ってきた情報は大事だと知っていたが、
今没頭していた研究をいきなり止められて少し機嫌が悪かった。
『……待った方がよかったですか』
「いいえ、私が間違えてた。ありがとう」
ARKは風香の答えを聞いて満足した。




