第十三章 第二幕 サイクロンの実力
伊豆スカイライン。西丹那駐車場
風香たちはバイクを次々と乗り入れた。
富士山が夏空にくっきりと浮かび、その足元には丹那盆地が広がっていた。
展望台には数人のライダーが景色を眺めているだけだった。
風香たちがエンジンを切ると、
あたりは一気に静かになった。
風香たちは吹き抜ける心地よい風を受けた。
「涼しいね」
風香は最初に赤井に話しかけた。
「はい。やっぱり富士山はいいですね」
赤井は風香とは目線を合わせずにそう言った。
目線を合わせると気持ちがバレそうで怖かった。
「だよねー。後で写真とりましょう」
風香はそう言って、他の仲間のところに行った。
「お父さん。お母さんのバイク、私も乗ってみようかな」
風香が尋ねると、影山が風香に目を向けた。
「それは止めておいた方がいい」
そう言って、立花に視線を向けた。
「そうだな、風香、お前はサイクロンに乗りなさい。」
立花も同意した。
風香は少しムッとした。
「私だって大型免許を持っているの」
「お母さんのバイクだって乗れるよ」
そう言った。
「風香ちゃんの走り、後ろで見てたけど、俺の知ってる普通のバイクなら、
あの走りはできない」
影山は珍しく真面目に話した。
「どういう意味ですか?」
「普通の人は公道で、あんなふうにハングオンで走らない。サーキットじゃないんだから」
「あれだけ無茶な体重移動をして、車体があのラインを保っているのはおかしい」
「あれが普通の走りなら危険だ。コーナーでは向こうが見えないからね」
「もし、反対車線から車が来たらどうする?反応出来ないはずだよ」
風香は少し考えた。
サイクロンはジャイロで常に車体の姿勢を補正している。
だからライダーが少々間違えた乗り方をしてもジャイロ補正で車体を安定させる。
さらに、道路状況はARKが把握している。
ブラインドコーナーの先に車があれば、サイクロンは風香より先にそれを知っている。
(私、自分の実力と勘違いしていた)
(だから私は普通のバイクに乗れないの……?)
「アル」
『はい』
「もし私が母さんのバイクで今みたいに走ったら、事故る確率を教えて」
『……言いにくいですが、100%です』
「そっか……」
「ふふっ、なるほどね」
風香は笑った。
「風香さん?」
赤井が心配そうに言った。
「大丈夫、だったら、サイクロンの設定を普通のバイクと同じ設定にして練習し直せばいい」
風香は、目が研究者の目になっていた。
影山は大きく息を吐いた。
「風香ちゃんは、強いねぇ」
影山は、風香の機嫌が悪くならなくてよかったと思った。
立花を見た。
藤三郎は鼻を鳴らして頷いた。
「さて」
「じゃぁ、みんなで記念写真を撮りましょう」
バイクを並べてその前で写真を撮ろうとした。
ただ、赤井が遠慮して縁の方へ行こうとしたので
風香が赤井の手をとって、真ん中に来ているところでシャッターが下りた。
この写真は赤井が何度も見返す宝物になった。
ただ、
藤三郎の顔だけが複雑な表情だった。




