第十三章 第一幕 みんなでツーリング
ある日。
立花モーターズ前。
今日はツーリングの日だった。
待ちきれなかった赤井は、集合時間の一時間前に到着した。
「まぁ、誰もいないよな」
赤井は苦笑いをした。
バイクを止めて、愛車のCB400Fourを見た。
空気圧よし、燃料よし、あとは待つだけだ。
エンジンの音を聞いて、藤三郎が寝間着のまま店から出てきた。
「早いな」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
藤三郎は鼻を鳴らした。
「まぁ、嫌いじゃねぇな」
「今日は俺も400にするか」
藤三郎は店に戻り、支度をすると、
静香から預かっているGPZ400を引っ張り出してきた。
しばらくすると影山のZ2が四気筒のサウンドを奏でながらやってきた。
「おはよう、早いね」
「立花さんおはようっす」
藤三郎はZ2を見ながら、「おう」と答えた。
そして、庄屋もZ1で現れた。
赤井は庄屋に挨拶をした。
「おはようございます。今日はありがとうございます」
庄屋は笑みを見せた。
「おはよう、気にしなくていい、今日は楽しもう」
そういって、赤井の肩を叩いた。
ところが……。
約束の時間が来ても風香は現れなかった。
赤井は何度も商店街の前まで確認に行き、
腕時計を見てソワソワしていた。
その行動を見て藤三郎は少し渋い顔をした。
十五分後に、風香から電話があった。
「ごめんなさい、寝坊した。今から行きます。間に合う?」
藤三郎は電話を受けた。
「ああ、そうだな……今からお前の家の前を集合場所にする」
「風香は行ける格好にして、待ってろ」
藤三郎はチラリと赤井を見ると、周りの仲間に、
「風香の家に行くぞ」と言った。
赤井の心臓は跳ねた。
(風香さんの家……)
鳳邸。
一行は風香の家までやってきた。
「……」
赤井は言葉をなくしていた。
正門が自動で開くとほぼ同時に風香がサイクロンで出てきた。
「ごめんなさい。わざわざ家まできてもらって」
「でも、家まで来てもらうのって、大幹部らしい?」
風香は謝りながら、笑って舌を出した。
藤三郎は赤井の様子を見たあと、
「よし、今回も富士を見に行こう。コースも前回と同じで」
と言った。
一行は、伊豆スカイラインに向けてバイクのエンジンを掛けた。
「あの、僕が途中まで、先頭を走ります」
赤井はそう言った。
「じゃあ、赤井さんに私、ついて行くね」
風香は微笑みながら、そう言った。
赤井の心臓が再び大きく跳ねた。
「は、はい。ゆっくり走ります」
「大丈夫?なんか顔色悪いけど」
風香は尋ねたが、赤井はなんともないと言って、
ヘルメットを被った。
「風香さんと一緒に走ると、なぜか信号に止まらないんだよな」
赤井は走りながら一瞬バックミラーの風香を見た。
「しかし……立花さんの娘なのに、なんであんな豪邸に住んでいるんだ?」
「そういえば……名字も違うな、でも聞けないな」
赤井はヘルメットの中でぶつぶつ独り言を言っていた。
前回、先頭を走っていた影山は、風香の後ろを走っていた。
「あんまり最新のバイクには興味がないんだけどな」
しかし、
サイクロンの後ろを走っていると、その異常さが目についてきた。
手を離していてもスピードが勝手に上がったり下がったりしている。
「まぁ、クルーズコントロールは最近のバイクならついているか」
影山はさらに観察した。
風香が動いても、車体は全くブレない。
「なんか、おかしくないか?」
影山は興味が出てきた。
伊豆スカイライン。
峠道に入る手前、
影山が一番驚いたのが、サイクロンが変形したことだった。
クルーズモードから、スポーツモードに変わった。
「クルーザーじゃ、ないのか?」
ヘルメットの中で思わず突っ込んだ。
少しだけ、赤井のバイクのスピードが上がった。
風香は赤井についていく。
それを影山は見ていた。
「なんだ?そのコーナーのバンク角」
「怖くないのか?最近の女子はすごいな」
しかし、
次のコーナーに差し掛かった時、風香の動きと車体の挙動が合っていなかった。
風香は思いっきり体を倒しているのに、
まるで車体がそれを許さないかのようにバンク角を適切に調整しているようだった。
「あれ?」
そのような場面が何度か続き、影山は確信した。
「最近のバイクはここまできているのか、すごいな」
そう影山は感心した。
庄屋は風香と同じように、仲間とツーリングをしたことがなかったので、
単純に楽しんでいた。Z1の調子もかなり良かった。
藤三郎は少し離れて全体を見ていた。
風香の走りに少し不機嫌になった。




